白山眞理

白山眞理（しらやま まり）は、1958年10月1日に東京都世田谷区に生まれた、日本の写真史家、写真評論家である。父は森山欽司、母は森山眞弓。

学歴としては、1981年に昭和女子大学文学部を卒業している。その後、写真史研究の道を深め、2012年には千葉大学大学院融合科学研究科後期博士課程を単位取得退学し、学術博士の学位を取得した。

職歴においては、1990年に財団法人・日本写真機光学器機検査協会（現在の日本カメラ財団）に入職したことが特筆される。同財団において、日本カメラ博物館およびJCIIライブラリーの開設と運営に中心的立場で関わった。長年にわたり日本カメラ博物館に勤務し、写真に関する貴重な資料の収集、保存、研究、展示といった活動に従事している。また、東京造形大学や立教大学などで非常勤講師として教鞭をとり、後進の育成にも貢献している。

白山氏の主要な研究テーマは、1920年代から1960年代にかけての日本写真史である。特に、報道写真の歴史、名取洋之助とその主宰した国際報道写真協会「日本工房」の活動、芸術写真、そして戦前・戦中の外地における写真表現などに焦点を当てている。初期の研究では、写真関連雑誌や名取洋之助・日本工房を中心に据え、その後、対象を広げて多様な側面から日本写真史を掘り下げてきた。JCIIフォトサロンで開催される展覧会の企画も数多く手掛けており、研究成果を写真展という形で一般に公開し、写真文化の普及啓発にも尽力している。

日本写真史研究における白山氏の学術的な貢献は高く評価されており、複数の権威ある賞を受賞している。2003年には日本写真芸術学会学術賞を受賞し、その後の2014年には日本写真学会学術賞、さらに2015年には日本写真協会賞学術賞を受賞した。これら日本の写真関連分野における主要な学術賞を立て続けに受賞していることは、白山氏の研究が学界において確固たる地位を築いていることの証左といえる。所属学会としては、日本写真芸術学会、日本写真協会、日本写真学会に名を連ねている。

長年の研究活動の成果は、数多くの著作や論文として発表されており、日本写真史研究における重要な文献となっている。主な著作として以下が挙げられる。

『写真雑誌の軌跡』（2001年、JCIIフォトサロン）
『報道写真の夢 : 名取洋之助と日本工房作品展（JCII photo salon library:149）』（2003年、JCIIフォトサロン）
『名取洋之助と日本工房（1931-1945）　報道写真とグラフィック・デザインの青春時代』（堀宜雄と共編、2006年、岩波書店）
『名取洋之助―報道写真とグラフィック・デザインの開拓者―』（2014年、平凡社コロナ・ブックス）
『〈報道写真〉と戦争 1930-1960』（2014年、吉川弘文館）
『戦争と平和〈報道写真〉が伝えたかった日本』（小原真史と共編、2015年、平凡社コロナ・ブックス）
『京都大学人文科学研究所所蔵　華北交通写真資料集成』全2巻（貴志俊彦と共編著、2016年11月、国書刊行会）
『カメラとにっぽん―写真家と機材の180年史』（日本カメラ博物館編、2019年、国書刊行会）

これらの著作に加え、名取洋之助の海外活動や挫折、木村伊兵衛の作品分析、戦時宣伝写真などに関する多数の学術論文を発表しており、個別の研究テーマを深く掘り下げている。JCIIフォトサロンにおける各種写真展の企画および関連カタログの制作も、氏の重要な活動の一部である。

白山眞理氏は、日本カメラ博物館での実務経験と学術研究を両輪として、戦中期を中心とした日本写真史の解明に多大な貢献をしてきた。その業績は広く認められ、今後の写真史研究においてもその果たした役割は大きい。

もう一度検索