白朮祭

白朮祭（おけらさい）

白朮祭は、毎年元日1月1日に京都市の八坂神社で行われる重要な神事です。この祭りは、無病息災や一年の安泰を祈るためのものであり、古くは「祇園削掛神事」として親しまれてきました。

祭りの始まりは、12月28日に行われる「鑽火式」にさかのぼります。この儀式では、古式に従って火鑽杵や火鑽臼を用いて神聖な火を鑽り出します。この火は、その後本殿内に設置された「白朮灯籠」に移され、1年間燈し続けられます。

続いて、大晦日である12月31日の午後7時からは、除夜祭が行われます。除夜祭が完了すると、境内の3か所に設けられた「白朮火授与所」に本殿からの「白朮火が移され、この火を受けた参拝者は、自分の神棚のロウソクを灯したり、雑煮を炊く際の火種として使用します。これを「をけら参り」と呼び、無病息災を願います。

元日である1月1日、午前5時からは本殿で白朮祭の神事が正式に行われます。この神事では、本殿前に置かれた片木の上の鉋屑に火をつけ、その火で邪気を祓います。この鉋屑には生薬の白朮（をけら）が混ぜられており、煙から独特の芳香が漂います。この火を火縄に移して持ち帰ることも可能で、燃え残った火縄は「火伏せのお守り」として家庭の台所に祀られます。

白朮祭に関連する火縄は、夜店でも販売されていますし、社務所から「火伏せ厄除け」のお守りとしても授与されています。八坂神社の崇敬会の会員には年末に火縄引き換え券が送付され、この火縄を使った光景はニュースでも報じられることが多いです。火縄は竹で作られており、火を移すのも簡単ですが、祭りの際に用いられる「をけら火」は素早く燃え尽きるため、早めの行動が求められます。

注意点としては、公共交通機関では火縄を消して乗るようにとのアナウンスがあります。例えば、大晦日の夜に終夜運転を行う電車やバスでは、燃えた火縄を持ち込むことができなくなっています。かつては一部の交通機関で火が付いた火縄の持ち込みが許可されていた時期もありました。

例年の白朮祭では、参拝者に対して酒が振舞われる「おけら酒」が提供されていましたが、2019年以降は中止されています。これは、多くの外国人観光客が押し寄せ、混雑や警備上の問題が発生したためです。

また、京都市上京区の北野天満宮でも「おけら参り」が行われ、12月31日の午後7時30分から「火之御子社鑽火祭」が執り行われるなど、京都全体でこの伝統は受け継がれています。

白朮祭は、古き良き伝統を体現しながら、地域住民や観光客に豊かな文化体験を提供している重要な祭りであり、神社の歴史に深く根ざした行事として、多くの人々に愛されています。

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