白毛

白毛（しろげ）とは

白毛は、馬の毛色の一種で、全身の毛の大部分が白色で、皮膚がピンク色をしているものを指します。これは、知られている馬の毛色の中でも最も白い部類に入ります。

白毛の特徴

- 全身が白い毛で覆われている
- 皮膚の色はピンク色
- 虹彩の色は黒色または茶色（稀に青色の個体も存在）
- 生まれつき白い馬が多いが、出生時は原毛色の斑があり、成長とともに白くなる例もある

佐目毛（さめげ）という似た毛色がありますが、白毛の方がより白く、有色毛の刺毛（さしげ）が生えることが多い点で区別できます。また、虹彩の色も異なり、白毛は黒色～薄青色であるのに対し、佐目毛は色素がほとんどありません。

白毛の発生機構

白毛は、メラニン色素の生成に関わる遺伝子の異常ではなく、メラニン細胞の数が少ないことが原因で発生します。これは、斑が全身に広がった状態と考えることができます。遺伝的にはアルビノとは異なり、白変種の一種です。白毛の原因となる遺伝子変異は、3番染色体にあるKIT遺伝子に存在します。

KIT遺伝子は、メラニン細胞の形成に必要なSCFという物質の受容体をコードしています。胎生期にメラニン細胞の前駆体がSCFの信号を受け取ることで、神経堤から表皮へ移動し、定着・分化します。KIT遺伝子に変異があると、この過程が正常に行われず、メラニン細胞が到達できない部分が白斑として現れます。

この白斑が小さければ駁毛（ぶちげ）、体の大部分を占めれば白毛となります。白斑の大きさは、KIT遺伝子の変異の種類や、ヘテロ接合体（遺伝子を1つ持つ）かホモ接合体（遺伝子を2つ持つ）かによって変化します。KIT遺伝子の変異には20種類以上が報告されており、ヘテロ接合体で白毛を引き起こすものを優性白毛遺伝子、ヘテロ接合体で駁毛を引き起こすものを駁毛遺伝子と呼びます。駁毛遺伝子の中には、ホモ接合体で白毛を引き起こすものもあり、これをサビノ白毛遺伝子と呼びます。

白斑部位にはメラニン細胞がほとんど存在しないため、白毛やぶち毛の発生は他の毛色遺伝子に影響を受けません。例えば、鹿毛（かげ）の遺伝子を持っていても、体表面にメラニン細胞が少ないため、鹿毛の特徴はほとんど現れません。芦毛（あしげ）や栗毛（くりげ）なども同様です。ただし、佐目毛遺伝子をホモで持つ場合は、目が佐目毛の特徴である薄い青色になります。

優性白毛

アメリカや日本に多いタイプで、白毛遺伝子を親から1つ受け継ぐ（ヘテロ接合体）ことで白毛を発現します。この遺伝子は他の毛色関連遺伝子に対して優性であるため、原毛色に関わらず、この遺伝子を持つ馬は白毛になります。

サビノ白毛

KIT遺伝子の変異であるサビノ遺伝子によるもので、世界各地の様々な品種に見られます。白毛とは異なり、サビノ遺伝子は2つ（ホモ接合型）持たなければ白毛にはなりません。1つ（ヘテロ接合型）しか持たない場合は、サビノと呼ばれるぶち毛を発現します。

KIT遺伝子の変異による毛色は、白毛やサビノ以外にも、トビアノや粕毛（かすげ）などが知られています。トビアノは広範な白斑を生じる斑毛の一種で、KIT遺伝子の制御領域の異常により白斑が生じます。これは単純な優性遺伝であり、ホモでも白毛にはなりません。粕毛も同様に、ホモでもヘテロでも大きな変化はありません。

KITの遺伝型と表現型

遺伝型	表現型
-	-
w/w	野生型
Wd/w	白毛（劣性致死）
W/w	白毛
Sb1/Sb1	サビノ白毛
Sb1/w	サビノ

白毛の例

- W1（フランシュ＝モンターニュ種）
- W2（サラブレッド、White Beautyの系統）
- W3（アラブ種、R Khasperの系統）
- W4（カマリロホワイトホース、Sultanの系統）
- W5（サラブレッド、Puchilinguiの系統）
- W6（サラブレッド、マルマツライブの系統）
- W7（サラブレッド、Turf Clubの系統）
- W8（アイスランドホース）
- W9（ホルシュタイン）
- W10（クォーターホース、Santanaの系統）
- W11（南独挽系種）
- W12（サラブレッド）
- W13（クォーターホース）
- W14（サラブレッド、シラユキヒメの系統）
- W15（アラブ種）
- W16（オルデンブルク馬）
- W17（日本輓系種、ハクバビューティーの系統）
- SB1（多様な品種、サビノ）

KIT以外の遺伝子による白毛

致死白毛

致死性白子馬症候群とも呼ばれ、エンドセリン受容体B（EDNRB）遺伝子の変異が原因です。この遺伝子をホモで持つ個体は、全身の白毛と腸の神経系の欠陥が特徴で、生後数日以内に死亡します。

LP遺伝子による白毛

レオパルドと呼ばれるぶち毛を発現するLP遺伝子をホモで持つと、白毛になることがあります。

白毛