白頭山福童

白頭山福童：巨人の生涯

白頭山福童（はくとうざん ふくどう、1903年～没年不詳）は、大相撲において類まれな体格で注目を集めた力士でした。韓国の忠清北道出身、本名は朴漢卦（パク・ハンファ）。身長217cm、体重140kgという恵まれた体格は、昭和以降の力士の中で最も高いとされています。

1927年10月場所、24歳で初土俵を踏んだ福童は、すでに身長208cm、体重132kgという巨体でした。「出羽ヶ嶽を見下ろす巨人」として注目を集め、高砂部屋に入門します。しかし、幼少期の病気による背骨の弯曲など、身体的なハンデを抱えていたとされており、入門当初から期待されたほどの活躍はできませんでした。

力士としての最高位は三段目。1930年5月場所を最後に廃業します。多くのファンが期待した出羽ヶ嶽との対戦は実現せず、幕内への昇進も叶わぬまま、短い力士人生を終えました。

廃業後は、生活の糧を得るため様々な職を転々としています。劇団の旗持ちやチラシ配り、ダンスホールの用心棒など、安定した仕事とは無縁の生活を送ります。転機が訪れたのは1934年。森永製菓の社員に見出され、「キャラメル大将」として、日本各地、さらには樺太、朝鮮、台湾、満州といった当時の日本植民地までキャラメルを宣伝する旅に出ます。水兵服姿で各地を回り、販促活動に尽力したと記録に残されています。

その後は遊園地の迷子係なども務めたと伝えられていますが、晩年については詳しい記録が残されていません。1960年代には既に故人となっていたと推測されています。

現在、東京都江東区富岡八幡宮境内にある「巨人力士身長碑」には、福童の名前と身長「七尺一寸五分（約217cm）」が刻まれ、その存在を今に伝えています。

白頭山福童の生涯は、恵まれた体格を持ちながら、力士として思うように活躍できず、その後も様々な職業を転々とした、波乱に満ちた人生でした。しかし、その巨体と異色の経歴は、大相撲史、ひいては昭和初期の社会の断面を垣間見せる貴重な存在として、今も人々の記憶に刻まれています。彼の名は、大柄な体格と短い力士人生、そして廃業後の多様な職業経験を通じて、時代背景とともに語られるべき、忘れられた巨人と言えるでしょう。

参考文献

三宅充『大相撲なんでも七傑事典』、講談社、1995年
「森永製菓の児童文化関連事業（二）」―キャラメル大将（昭和八年~昭和十一年）の事例を手掛かりとして― 愛知淑徳大学大学院―文化創造研究科紀要第4号―2017年3月

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