白鳥とコウモリ

白鳥とコウモリ

『白鳥とコウモリ』は、東野圭吾氏が作家生活35周年を記念して書き下ろした長編ミステリー小説です。2017年から2021年にかけて『小説幻冬』で連載された7編を大幅に加筆・修正し、2021年4月に幻冬舎から単行本が刊行されました。2024年4月には幻冬舎文庫から上下巻で分冊版が発売されています。

あらすじ

物語は、2017年11月、東京の港区で弁護士・白石健介が殺害された事件から始まります。警視庁捜査一課の刑事・五代努は、捜査を進めるうちに、白石の事務所に電話をかけていた倉木達郎という男の存在を突き止めます。倉木は、33年前の愛知県岡崎市で発生した金融業者殺害事件と、今回の弁護士殺害事件の犯人であることを自供します。

しかし、白石の娘・美令と倉木の息子・和真は、それぞれの父親に対する疑念を拭いきれず、事件の真相を独自に探り始めます。2017年の東京と1984年の愛知を舞台に、複雑に交錯する「告白」が、新たな謎を呼び起こし、登場人物たちを迷宮へと誘います。

主要な登場人物

五代 努: 警視庁捜査一課の刑事。弁護士殺害事件の捜査を担当。「この世の女は全員名女優」というユニークな持論を持っています。
白石 健介: 殺害された弁護士。正義感が強く、人望も厚い人物でしたが、ある日突然、何者かに殺害されます。
倉木 達郎: 弁護士殺害事件の容疑者。過去に金融業者殺害事件も起こしたと自供します。その動機や真意は謎に包まれています。
白石 美令: 殺害された弁護士の娘。父の死に疑問を抱き、事件の真相を追います。
倉木 和真: 容疑者の息子。父の告白に納得できず、事件の裏に隠された真実を探ろうとします。

作品の特徴

本作は、過去と現在の事件が複雑に絡み合い、それぞれの登場人物の視点から物語が展開していくミステリーです。33年前の事件と現在の事件、二つの事件の真相が次第に明らかになるにつれて、登場人物たちの人間関係や過去の出来事が複雑に絡み合い、読者を最後まで飽きさせません。また、冤罪や贖罪、家族の絆といったテーマも深く掘り下げられており、単なるミステリーとしてだけでなく、人間ドラマとしても読み応えのある作品となっています。

東野圭吾氏は、本作を「新たなる最高傑作」と自ら語っており、その言葉通り、緻密な構成と予想を裏切る展開で、読者を魅了する作品です。

2024年11月には、本作の続編となる『架空犯』が刊行されました。

書誌情報

単行本: 幻冬舎、2021年4月7日発売、ISBN 978-4-344-03773-1
文庫本（上）: 幻冬舎文庫、2024年4月3日発売、ISBN 978-4-344-43370-0
文庫本（下）: 幻冬舎文庫、2024年4月3日発売、ISBN 978-4-344-43371-7

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