百万遍念仏

百万遍念仏（ひゃくまんべんねんぶつ）

百万遍念仏は、念仏を百万回唱えることを通じて、自分自身や故人の往生を願ったり、様々な祈りを捧げたりする行為です。この修行は、一般的に個人が7日または10日の期間にわたって念仏を唱えることで、その目的を達成できると考えられています。特に、この行為は「融通念仏」という考え方にも結びついています。これは、複数の人が同時に念仏を唱えることで、お互いの功徳を分け合うといった発想です。たとえば、10人がそれぞれ10万回の念仏を唱えれば、総計で100万回となり、百万遍念仏を行ったのと同じ効果を得られるとされています。

この念仏の実践には、大型の数珠を用いることがあり、その数珠をこすり合わせることで数を数えます。この場合、参加者は同じサイズや種類の数珠を持つことが求められます。この特別な数珠は「百万遍数珠」と呼ばれることがあり、念仏を唱える際の大切な道具とされています。

百万遍念仏の概念が初めて極楽往生と結びつけられたのは、唐の時代の僧侶・迦才によるものであると伝えられています。この伝統は平安時代に日本に伝わり、浄土教の普及とともにさらなる広がりを見せました。特に後醍醐天皇の時代には、善阿という僧侶が7日間にわたって百万遍念仏を実践し、疫病を鎮めたとされています。これが、知恩寺が「百万遍」という別名を持つようになった由来です。

室町時代から戦国時代にかけて、百万遍念仏は宮中にも浸透し、特定の日付、すなわち1月、5月、9月の16日には宮中で行われることが定められました。この時期において、伏見宮貞成親王は日記の中で、「過去追善 現在祈祷」と短くまとめています。

現代においても、日本の寺院や地域社会において百万遍念仏は実施されています。これは、鎮魂や追善、豊穣、除災といった目的のために行われ、地域の人々にとって大切な文化的行事となっています。このように、百万遍念仏は日本の宗教文化に深く根ざしており、多くの人々に支持されています。

参考文献

• - 伊藤唯真「百万遍念仏」（『国史大辞典 11』（吉川弘文館、1990年）ISBN 978-4-642-00511-1）
• - 伊藤唯真「百万遍念仏」（『日本史大事典 5』（平凡社、1993年）ISBN 978-4-582-13105-5）

関連項目

• - 知恩寺（百万遍）
• - 百万遍交差点
• - 念仏講

もう一度検索