知恩寺

百萬遍知恩寺：歴史と文化が息づく京都の浄土宗寺院

百萬遍知恩寺は、京都市左京区田中門前町に位置する浄土宗の大本山寺院です。古くは知恩寺として知られ、京都における浄土宗四ヶ本山のひとつに数えられています。法然上人二十五霊跡第22番札所にも指定されており、歴史と伝統を重んじる由緒ある寺院です。

歴史の軌跡：平安時代から現代まで

寺の歴史は平安時代前期にまで遡ります。創建は、比叡山功徳院の里坊であり、高僧円仁によって創建されたと伝えられています。当初は賀茂社（賀茂御祖神社）の神宮寺として、京都市上京区今出川付近に位置し、「賀茂の河原屋」「賀茂の禅坊」「賀茂の釈迦堂」などと呼ばれていました。

法然上人も度々この地を訪れ、一時滞在したとも伝えられています。法然上人の入滅後、弟子である勢観房源智が伽藍を整備し、念仏の道場として発展させました。その後、幾多の変遷を経て、元弘元年（1331年）には疫病退散の祈願成就により「百万遍」の号を賜り、現在の名称の由来となりました。

応仁の乱や天文法華の乱など、幾度もの火災に見舞われながらも、再建を繰り返してきました。江戸時代には現在の地に移転し、伽藍が整備されました。明治時代の神仏分離令によって賀茂御祖神社の神宮寺の立場を離れましたが、現在も多くの文化財を有する重要な寺院として存在感を示しています。2019年には、正式名称を「百萬遍知恩寺」と改称しました。

見どころ：重要文化財を含む数々の建造物

境内には、国宝や重要文化財に指定されている数々の建造物が点在しています。

釈迦堂: 寛文4年（1664年）再建。本堂として円仁作と伝わる釈迦如来坐像を安置しています。
阿弥陀堂: 文化8年（1811年）建立。土佐光孚による文殊菩薩像が描かれた来迎壁が注目を集めています。
御影堂: 宝暦6年（1756年）再建。法然上人像を祀り、内部には法然上人の遺骨と遺髪が納められています。
勢至堂: 寛文14年（1731年）再建。
加茂明神鎮守堂: 寛文2年（1662年）再建。賀茂社の神宮寺であった歴史を今に伝えています。
総門・西門・鐘楼: 江戸時代に再建された重要文化財。
* 御廟: 法然上人、源智上人の墓を祀り、歴代住持の墓も並んでいます。

その他にも、多くの塔頭寺院や、猫間塚、阿弥陀経石などの史跡、そして枯山水庭園など、見どころは尽きません。

文化イベント：古本まつりと百万遍念珠繰り

百萬遍知恩寺では、年間を通して様々なイベントが開催されています。特に有名なのは、10月末から11月3日頃にかけて開催される「秋の古本まつり」です。多くの書物愛好家が集まる、人気のイベントとなっています。また、毎月15日（8月のみ25日）には「大念珠繰り法要」が行われ、独特の雰囲気を味わうことができます。

アクセスと周辺情報

百萬遍知恩寺は、京阪電車出町柳駅から徒歩圏内に位置しています。周辺には京都大学吉田キャンパスや、寺院の名前に由来する百万遍交差点などがあり、観光の拠点としても最適な場所です。

まとめ

百萬遍知恩寺は、歴史、文化、そして現代が交錯する、魅力あふれる寺院です。訪れる人々に、静寂と安らぎ、そして歴史の重みを感じさせる、京都を代表する名所の一つと言えるでしょう。

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