百済市場駅

百済市場駅：大阪東部市場を支えた貨物駅の軌跡

かつて大阪府大阪市東住吉区今林にあった百済市場駅は、国鉄（日本国有鉄道）の貨物駅として、大阪市中央卸売市場東部市場の物流を支えていました。東部市場の南端に位置し、買荷保管や積込作業を行う重要な拠点でした。

開業と鮮魚輸送

東部市場は1964年11月25日に開設されました。百済駅（現在の百済貨物ターミナル駅）から続く2.1kmの引き込み線が建設され、1962年6月から工事が開始。市場開業の遅れにより、駅は市場開業前日の11月24日に先行開業しました。駅名は議論の末、「百済市場駅」と決定されました。年間19万トン、一日平均39両の貨物取扱いを予定していました。

鮮魚特急「ぎんりん」は、輸送時間を大幅に短縮した画期的な輸送手段でしたが、当初は大阪市場駅のみの発着でした。東部市場への輸送はトラックに頼らざるを得ず、競争上不利な状況でした。関係者らの粘り強い働きかけにより、1969年10月1日より、「ぎんりん」の一部貨車が百済市場駅にも乗り入れるようになりました。

廃止

しかし、時代の変化に伴い、輸送体系の転換が進みました。集約輸送方式の廃止が決まり、百済市場駅は1984年2月1日に廃止されました。

駅構造と周辺

百済市場駅は、東部市場の南端に3本の発着線と2698mの軌道延長を有していました。百済駅から伸びる引き込み線は、市場南門の東側でカーブを描いていました。現在では、廃線跡は道路となっています。

年表

1964年11月24日: 百済市場駅開業
1969年10月1日: 鮮魚特急「ぎんりん」の一部貨車発着開始
1984年2月1日: 百済市場駅廃止

まとめ

百済市場駅は、わずか20年の短い歴史でしたが、大阪東部市場の物流に重要な役割を果たしました。鮮魚特急「ぎんりん」の運行開始や、市場の競争力向上に貢献した側面も持ち合わせていました。その存在は、高度経済成長期における日本の物流事情の一端を示す貴重な事例と言えます。廃線となった現在でも、その跡は周辺地域の歴史を物語っています。

参考文献

大阪市中央卸売市場 編『東部市場十年誌: 大阪市中央卸売市場』東部市場協会、1975年
* 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』 2巻（初版）、JTB、1998年10月1日

もう一度検索