皇室詐欺

皇室詐欺とは

皇室詐欺とは、皇室関係者であるかのように装い、人々を騙して金銭や利益を得る詐欺行為を指します。古くは天皇を名乗る者から、近年では皇族を騙る者まで、様々な手口で人々を欺いてきました。

天皇を騙る行為

戦前・戦後の混乱期における自称天皇

大日本帝国憲法下では、天皇は神聖不可侵とされ、その権威は絶対的なものでした。そのため、天皇や皇族を騙る行為は重罪とされました。しかし、戦後の混乱期には、自称天皇が現れるようになりました。

有名な例として、「熊沢天皇」が挙げられます。戦前は南朝の後裔を自称するだけであったものの、戦後になって突如として「正当な天皇」を主張し始めました。熊沢天皇の他にも、複数の自称天皇が現れ、それぞれが「侍従」を従えて活動しました。当初は実業家などから寄付を得たり、新聞に取り上げられたりもしましたが、昭和天皇が全国巡幸を始めると、人々の関心は薄れていきました。

実際の詐欺事件

1950年代には、ブラジルで「朝香宮殿下」を名乗る偽者が現れました。実際には渡伯していない朝香宮鳩彦王を騙り、農場で働けば日本へ帰れると嘘をつき、多くの日系人を騙しました。この偽朝香宮は人前に姿を現すことはなく、地元警察によって逮捕されました。

平成時代には、「白仁王殿下」と「渡辺殿下」を名乗る詐欺グループが現れました。「白仁王」は昭和天皇の落胤、「渡辺殿下」は国際連合から爵位を授与されたと偽り、中小企業の経営者などを対象に「育成資金」を騙し取りました。被害者を信用させるために偽の勲章や賞状を作成し、ホテルで「勲章授与式」まで行いました。被害総額は15億円を超えましたが、首謀者の「渡辺殿下」は事前に周到な準備をしていたため、背後に資金源があるのではないかと疑われました。

「白仁王」は一般人であり、詐欺グループに加担するうちに、自らが落胤であると信じ込むまでになりました。被害者の中には、逮捕後も「白仁王」を信じている者もいました。この事件は、皇室の代替わりという状況を利用した巧妙な詐欺であったと言えます。

1996年には、「中山殿下」と名乗る人物が現れました。中山のつく皇族はいませんでしたが、明治天皇の母系にあたると主張し、出資金を騙し取りました。同年には、シンガポールで「昭和天皇の娘」を名乗る人物も現れています。

2003年には、「有栖川識仁殿下」と名乗る人物が現れました。断絶した有栖川宮の継承者であると偽り、相棒の妃殿下と共に旧軍の軍服を着用し、結婚式を挙行して信用を得ました。その後、外国の政治家と会食した写真を使い、出資金を集めていました。

皇室詐欺の手口と背景

皇室詐欺は、皇室に対する人々の敬意や関心を利用した犯罪です。犯人は、偽の身分や肩書、勲章や賞状などを使い、被害者を信用させます。また、大規模なイベントや儀式を利用して、詐欺をより巧妙に行うケースもあります。

皇室詐欺は、被害者の無知や情報不足につけ込むだけでなく、犯人自身が詐欺を信じ込んでいる場合もあります。このようなケースでは、詐欺がより巧妙になり、被害が拡大する傾向があります。

皇室詐欺への対策

皇室詐欺の被害に遭わないためには、まず皇室に関する正しい知識を持つことが重要です。また、見慣れない人物や団体からの勧誘には、安易に信用しないように注意する必要があります。少しでも不審に感じたら、警察や専門機関に相談することが大切です。

まとめ

皇室詐欺は、歴史的に繰り返されてきた犯罪です。その手口は巧妙化しており、被害に遭わないためには常に警戒が必要です。皇室に対する正しい知識を持ち、不審な勧誘には注意することで、被害を未然に防ぐことができます。

参考文献

保坂正康『十九人の自称天皇　昭和秘史の発掘』（悠思社）-1992
保坂正康『天皇が十九人いた―さまざまなる戦後』（角川文庫）-2001
* 原田実『トンデモニセ天皇の世界』（文芸社）-2013

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