皇帝官房第三部

皇帝官房第三部について

皇帝官房第三部（こうていかんぼうだいさんぶ）は、帝政ロシア時代に設立された政治秘密警察の機関です。この部門の設置は、1825年に発生したデカブリストの乱を受けてのもので、皇帝ニコライ1世が社会の不安定さを受けて、皇帝専制に有害な思想を取り締まるために設けられました。

設立の背景

1825年、ロシア皇帝アレクサンドル1世の死去後、自由主義を志向する青年将校たちがデカブリストの乱を引き起こしました。この反乱は、ニコライ1世によって速やかに鎮圧されましたが、その後の社会情勢は依然として政権にとって不安視されました。ニコライ1世は、自由主義思想の蔓延を恐れ、1826年に皇帝官房内にこの第三部を設けることで、政治犯罪や反体制勢力への監視を強化しました。

組織の構成

第三部は、複数の課（ekspeditsiya）に分かれており、具体的には以下の役割を持っていました：

• - 第一課：最高警察で、政治犯罪や反体制的な組織の監視を担当。
• - 第二課：通貨偽造や宗教的異端の監視、殺人事件などを扱う。
• - 第三課：外国人監視及び対外情報の収集。
• - 第四課：農村の状況や職員の監察を行う。
• - 第五課：文書検閲を行い、後に第一課に吸収されました。

このように、第三部は広範囲にわたって国民の動向を監視する役割を果たしました。

任務と影響

最初の長官としてアレクサンドル・ベンケンドルフ伯爵が任命され、彼は第三部を「道徳的な医者」として国民に信頼されることを望みました。彼の指導の下、第三部は政治的な安定を保つために各種の監視活動を強化しました。この時期、第三部は非常に効率的に機能していましたが、その一方で国民に対する抑圧も強まりました。

検閲の実施

長官の指導のもと、第三部は出版物や演劇に対する厳格な検閲を行い、多くの自由主義的な思想を排除しました。プーシキンやゴーゴリといった作家たちも、その作品が当局から不適切と見なされれば流刑にされる危険がありました。ニコライ1世は、自らの権力と専制を保持するために、第三部の報告を詳細に読み込み、指示を下していました。

廃止とその後

しかし、アレクサンドル2世の時代になると、第三部の強大な権限にも関わらず、革命運動やテロが増加し、次第にその評価は下がっていきました。情報収集の機能が十分に果たせず、噂や中傷のレベルに留まってしまったのです。1878年には長官が暗殺され、その後のアレクサンドル2世に対する暗殺未遂によって、第三部は解体を余儀なくされました。最終的に第三部は内務省に組み込まれる形で廃止され、その役割は歴史に終止符を打たれました。

歴代長官

• - アレクサンドル・ベンケンドルフ伯爵（1826年-1844年）
• - アレクセイ・フョードロヴィッチ・オルロフ伯爵（1844年 - 1856年）
• - ヴァシーリー・アンドレエヴィチ・ドルゴルーコフ公爵（1856年 - 1866年）
• - ピョートル・アンドレーエヴィチ・シュヴァーロフ伯爵（1866年 - 1874年）
• - アレクサンドル・ポタポフ（1874年 - 1876年）
• - ニコライ・メゼンツェフ（1876年 - 1878年）
• - アレクサンドル・ドレンテルン（1878年 - 1880年）

このように、皇帝官房第三部は政治の安定と権力の維持を目的に設立され、多くの監視や抑圧を行った歴史的な組織であったのです。

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