盆燈籠

盆燈籠についての総合ガイド

盆燈籠（ぼんとうろう）は、お盆の時期に墓地に設置される燈籠型の装飾で、特に広島県西部の安芸地方でよく見られます。この文化は、広島城下を起源としており、現在は「盆灯ろう」や「盆灯籠」といった別の表記も存在しています。また、その形状から「朝顔燈籠」とも呼ばれていますが、香川県中部でも類似の習俗が見られることがあります。

盆燈籠の製作と構造

盆燈籠は、竹を使って逆六角錐の形に組み立て、その側面に色紙を貼り付けて作ります。一般的に使われる色合いには赤、青、黄があり、これにはこの世の無常を表現する意味が込められているとされています。燈籠の一面には上下を開けた「窓」と呼ばれる部分があり、そこから装飾品が垂れ下がっているのが特徴です。かつては茄子の切り端にろうそくを立てて火を灯していましたが、火災の危険性からこの方法は現在行われていません。初盆の際は、白い紙だけで作られた「白燈籠」が用いられ、他の色紙や装飾は施されません。

盆燈籠は多くの場合、家庭で手作りされることが一般的でしたが、近年では海外で生産されるものも増えてきました。お盆の時期には、寺院の売店や町の商店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど、様々な場所で購入可能です。価格は一般的に1本あたり千円程度で、1980年代には装飾が華美になり、その分値段も上昇傾向にありました。

盆燈籠の歴史と由来

盆燈籠の由来には諸説がありますが、一説には広島城下の紙職人の夫婦が亡くなった娘のために手作りの燈籠を墓に供えたことが始まりだと伝えられています。民俗学者の神田三亀男は、庶民が釣灯籠や石灯籠の代わりに考案したのではないかと推測しています。江戸時代後期には、広島城下でこの習慣が定着し、次第に多くの人々に受け入れられるようになりました。

盆燈籠の文化的変遷

盆燈籠の文化は、時代とともに変化を遂げてきました。戦後の高度経済成長期には、地域住民に広がり、宗派を越えて一般化しました。しかし、1970年代以降、火災のリスクや環境問題が浮上し、一部の寺院が盆燈籠を制限するようになりました。このことから、近年では一般的な盆燈籠の文化が衰退する傾向が見られ、代わりに名号札や墓参札などが使用され始めています。

地域の分布と風習の違い

盆燈籠は広島市を中心に広がり、1981年には姉妹都市の竹原市や北広島町、さらには佐伯町や大竹市、さらには安芸灘の島々で見ることができます。戦前には広島旧市内周辺に限定されていましたが、戦後には他の地域にも普及していきました。一方、香川県の坂出市など中部地域でも盆燈籠が見られ、一般的には木の枠に和紙を用いた質素な作りになっています。

盆燈籠を描いたフィクション作品

盆燈籠を題材にした作品も多く、特に著名なものに、うえむらちかの小説『灯籠』や、こうの史代による漫画およびアニメーション映画『この世界の片隅に』があります。これらの作品は、盆燈籠の文化やその背景を知るための貴重な資料でもあります。

結論

盆燈籠は、単にお盆に墓に灯される装飾品ではなく、地域の文化や歴史、さらには人々の思いが詰まった重要な存在です。私たちの先祖が築いてきたこの伝統を理解し、次世代に受け継いでいくことが大切です。

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