盟神探湯

盟神探湯（くかたち、くかだち、くがたち）

盟神探湯は、日本の古代における神明裁判の一つで、ある人物の是非を判定するための呪術的な方法です。この裁判形式は、神々に潔白を誓わせることから始まり、熱湯や蛇を用いた試練を通じて、正しい者と罪のある者を見分けることが目的とされていました。

方法と背景

具体的には、対象者に対して熱湯が沸かされた探湯瓮（くかへ）に手を入れさせ、火傷しなければ潔白、火傷すれば有罪と判断されました。また、毒蛇を入れた壷に手を入れさせる方法も存在し、無事であれば正しいとされました。これらの試練は、事前に神が結果を示した上で行われることが特徴で、うけいの一種として位置づけられます。

歴史の記録

7世紀の文献『隋書』の倭国伝には、熱湯や蛇を用いた裁判の実施が記録されています。このように、盟神探湯は非常に古い時代から行われていたことが確認されており、具体的な手法やプロセスが記録として後世に残っています。

たとえば、『日本書紀』の応神天皇9年の故事では、武内宿禰が潔白を訴え、盟神探湯によって正義が証明されたとされています。また、允恭天皇の時代にも、調査の手段としてこの方式が用いられており、正しい名前を名乗る者が無事で、詐りの者が火傷することで、社会秩序を保つ役割を果たしたことが記されています。さらに、継体天皇の時代には、盟神探湯の使用がもたらす惨劇により、継体天皇が関わったというエピソードもあります。

中世とその後

この神明裁判の記録は、日本書紀の例を最後に約700年間途絶えます。しかし、室町時代に入ると、再び熱湯を使用する神明裁判の記録が現れ、「湯起請」という名称で呼ばれるようになります。この時期の神明裁判の方法自体は盟神探湯に似ているため、両者の関連性については研究者の間で議論があります。

現代における意義

盟神探湯という言葉は、神前で清めのために沸かす湯を指すように進化しました。現在の神事においては、温めた湯を参拝者にかける「湯立」や「湯起請」の儀式が行われており、これらは古代の盟神探湯にその起源をさかのぼることが可能です。

また、アイヌ民族の間でも「サイモン」と呼ばれる相似の試験が行われていました。これらの様式は、古代インドやヨーロッパの神明裁判にも類似の方法が見られ、真実を判定する手段として広範な文化・地域で用いられていたことが分かります。

結論

盟神探湯は古代から続く日本独自の神明裁判の一つであり、正義と不正を見極めるための儀式として機能しました。現代においてもその名は神事に引き継がれ、長い歴史の中で変化しながらも日本文化の一部として生き続けています。

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