目撃 (映画)

国家権力に翻弄される泥棒の逃亡劇『目撃』

1997年公開のアメリカ合衆国サスペンス映画『目撃』(原題: Absolute Power)は、クリント・イーストウッド監督・製作・主演による重厚な作品です。イーストウッド監督にとって17作目となる本作は、デイヴィッド・バルダッチの同名小説を原作とし、大統領暗殺という衝撃的な事件に巻き込まれた泥棒の壮絶な逃亡劇を描いています。ジーン・ハックマン、エド・ハリスら実力派俳優が脇を固め、高い評価を得ています。

巧妙な計画が運命の悪戯を招く

主人公は、腕利きの泥棒、ルーサー・ホイットニー。彼は大統領の後援者であるウォルター・サリヴァンの邸宅に侵入を試みます。しかし、そこで目撃したのは、大統領アラン・リッチモンドとサリヴァンの妻クリスティの密会、そして大統領によるクリスティへの暴行、そしてその後の悲劇でした。酔ったリッチモンドの暴行に耐えかね、ナイフで反撃したクリスティは、駆けつけたシークレットサービスに誤って射殺されてしまいます。

この事件を隠蔽しようと画策する大統領補佐官グロリアは、シークレットサービスのビルとティムに証拠隠滅を指示。全てを目撃したルーサーは、現場に残されたナイフを持ち去ります。

巧妙な捜査と逃亡劇

事件を担当する刑事セス・フランクは、現場の状況から強盗事件と推測するものの、いくつかの不審点に気づきます。捜査を進める中で、フランクはルーサーの存在にたどり着きます。フランクはルーサーの人物像から、彼を犯人とは考えませんでしたが、ルーサーは娘ケイトとの確執を抱え、国外への逃亡を計画していました。

一方、グロリアはルーサーの動向を監視し、彼の逃亡を阻止しようとします。空港で大統領の会見を目撃したルーサーは、不正を暴くことを決意。グロリアに証拠となるナイフの写真を送信します。

迫りくる脅威と葛藤

グロリアは、事件隠蔽に反対するビルと、ルーサー抹殺を主張するティムの間で板挟みになります。さらに、クリスティの復讐を誓うサリヴァンも、ルーサーの命を狙います。

フランクは、ルーサーとケイトを引き合わせようとします。再会を果たしたルーサーとケイトでしたが、追っ手の襲撃を受けます。ルーサーはケイトを逃がし、グロリアにクリスティのネックレスを送ります。

最後の決断

リッチモンドは、ルーサーとケイトの暗殺を命令。危機に陥ったケイトは、ティムに襲われそうになりますが、ルーサーによって救われます。ティムはルーサーに殺害され、ルーサーはフランクに協力を求めます。

ルーサーはサリヴァンと接触し、事件の真相を明らかに。フランクはグロリアを逮捕しますが、良心の呵責に耐えかねたビルは自殺します。サリヴァンはホワイトハウスに乗り込み、リッチモンドは自殺します。事件は終息しますが、ルーサーとケイトの父娘関係は、新たな一歩を踏み出します。

原作との相違点

映画版と原作小説には、いくつかの相違点があります。原作では、弁護士のジャック・グラハムが主人公であり、ルーサーは途中で殺害されます。登場人物の年齢や人種、そして結末も大きく異なっています。イーストウッド監督は、原作の改編に際し、「観客に気に入られる登場人物は殺さないでくれ」と脚本家に要求し、大幅な変更が加えられました。

作品の評価

『目撃』は、Rotten Tomatoesで56%、Metacriticで52/100と、批評家の評価は分かれています。しかし、クリント・イーストウッドの演出力、豪華キャストの演技、スリリングなストーリー展開は、多くの観客を魅了しました。国家権力と個人、正義と復讐、親子の絆など、様々なテーマが複雑に絡み合い、観る者の心を揺さぶる作品です。

もう一度検索