目黒考二

目黒考二：多彩なペンネームで彩られた文筆家の生涯

目黒考二（1946年10月9日 - 2023年1月19日）は、エッセイスト、文芸評論家、編集者として知られる日本の文化人です。本名はそのままに、北上次郎、藤代三郎など、複数のペンネームを使い分け、幅広いジャンルで執筆活動を展開しました。日本推理作家協会の会員としてもその名を知られています。

ペンネームに託した多様な顔

目黒考二は、執筆するジャンルに応じて複数のペンネームを使い分けるというユニークなスタイルを確立しました。群一郎、北上次郎、藤代三郎といった名前は、それぞれ異なる分野での彼の個性を象徴しています。特に、私小説は目黒考二、ミステリー文学評論は北上次郎、競馬評論は藤代三郎と使い分けられました。晩年は、ペンネームを使い分けるのが難しくなったため、使用頻度が減りました。

群一郎の名は、後に作家デビューを果たす群ようこに贈られたエピソードも残っています。

『本の雑誌』創刊と編集者としての才能

東京都で生まれた目黒考二は、明治大学文学部を卒業後、出版社勤務を経て、1976年に椎名誠らと共に雑誌『本の雑誌』を創刊しました。従来の書評誌とは一線を画し、エンターテインメント性を重視した書評やユニークな企画は、多くの読者の支持を集めました。

『本の雑誌』では、名義上は発行人を務め、椎名誠が編集長でしたが、椎名の多忙により、実質的な編集は目黒が担っていました。彼は、大塚英志や坪内祐三といった才能をいち早く見出し、連載を依頼するなど、編集者としての手腕も高く評価されています。社員であった群ようこを作家としてデビューさせたことも、彼の功績の一つです。

書評家、競馬評論家としての顔

目黒考二は、『本の雑誌』誌上で連載書評を執筆し、当初はSFを中心に扱っていましたが、後に冒険小説の書評に力を入れるようになります。彼の書評は、日本における冒険小説の普及に大きく貢献しました。晩年は、中高年の男女を主人公とした「人生シミジミ系」小説を好んで書評しました。

また、藤代三郎名義では、競馬に関する著作も多数発表し、『週刊Gallop』での連載「馬券の真実」は長きにわたり読者に愛されました。グリーンチャンネルの番組『全日本はずれ馬券委員会』では司会を務めるなど、競馬評論家としても活躍しました。

死去

2023年1月19日、肺がんのため76歳で逝去。その多岐にわたる活動は、日本の出版・文芸界に大きな足跡を残しました。

受賞歴

1984年 - 『冒険小説の時代』で日本冒険小説協会大賞最優秀評論大賞受賞
1994年 - 『冒険小説論 近代ヒーロー像100年の変遷』で日本推理作家協会賞評論その他の部門、日本冒険小説協会大賞最優秀評論大賞受賞

主な著作

『本の雑誌風雲録』
『活字三昧』
『冒険小説の時代』
『戒厳令下のチンチロリン』（藤代三郎名義）

目黒考二は、その多彩な才能と独自の視点によって、日本の出版文化に多大な影響を与えた人物として、記憶されるでしょう。

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