相対済令

相対済令（あいたいすましれい）

相対済令とは、江戸時代の日本において出された法令で、金銭に関わる民事訴訟を幕府が取り扱わず、当事者間での解決を促すものです。この法令の初発令は寛文元年（1661年）で、以後何度か改訂されて実施されました。特に注目すべきは、8代将軍徳川吉宗が発令した享保4年（1719年）における相対済令です。

背景と目的

この法令の発令は、増加する民事訴訟を背景にしています。訴訟処理が滞り、刑事訴訟にまで影響を及ぼす事態が生じていました。そのため、幕府は、裁判所の業務を円滑にするために金銭に関する問題を当事者自身で解決するように指示しました。

享保4年の発令に先立つ享保3年（1718年）には、民事訴訟が35790件も持ち込まれ、そのうちの33037件が金銭問題に関連していました。この膨大な数の訴訟により、処理が追いつかず、実際に年内に解決できた件数はわずか11651件で、残りは翌年に持ち越されることになりました。

法令の内容

享保4年の相対済令により、金公事は原則として受け付けられず、当事者の間で話し合いで解決を図ることが求められました。ただし、利息のない金公事や、宗教目的での資金などは例外として取り扱われることになりました。この法令が金貸しなどの問題を軽減する狙いもあったことから、特に金銭に関わる訴訟が急増する中での対応策といえます。

しかし、この法令には明確な意図があり、借金を返すことを放棄することは許容されていませんでした。発令からわずか数日後、幕府は借金を返さない者への厳しい行政措置を発表し、「返済を怠っている者は訴えてほしい」とし、借金返済の義務は強調されました。

享保の相対済令とその後

相対済令は、その後も何度か改定が行われ、元文元年（1736年）や寛保2年（1742年）にも類似の法令が発令されました。この法律の目的は、金銭トラブルを円滑に解決することで、社会全体の秩序を保つことにもありました。実際、享保の相対済令により債務不履行が多発し、借金を返さない者に対する町人の行動も目立ちました。町奉行である大岡忠相は、債務者を辱める行為は武士の体面を損なうとし問題視しましたが、幕府は債権者を罰することは適切でないと判断しました。

こうして相対済令は、江戸時代の複雑な金銭問題への一つの応答であり、当時の社会における司法制度のあり方に影響を与えた重要な法令であったといえます。

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