相馬義胤 (十六代当主)

相馬義胤

相馬義胤は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、陸奥相馬氏第16代当主です。小高城を拠点に、宇多郡、行方郡、標葉郡を領有しました。父・盛胤の時代から、伊達氏との確執が続いていましたが、田村氏との和睦により所領の基盤を固めました。義胤は幼少の頃から各地を転戦し、奥州の覇権を狙う伊達輝宗・政宗に対抗するため、近隣の諸大名と合従連衡を繰り返しました。

生涯

1548年、相馬盛胤の嫡男として誕生しました。1560年には伊達稙宗の娘と結婚しますが、後に離縁。各地を転戦する中で、伊達氏とは伊具郡・亘理郡を巡り争いました。1573年に室町幕府が崩壊すると、奥州では伊達氏の勢力が拡大。義胤は蘆名氏や佐竹氏と連携し、伊達氏に対抗しました。1585年には、伊達輝宗が死去。後を継いだ伊達政宗との対立はさらに激化しました。1586年の人取橋の戦いでは、佐竹氏らと連合軍を形成し伊達軍と激突。一時は優勢に戦いを進めましたが、その後伊達氏の勢力が拡大し、相馬氏は苦境に立たされます。

1590年、豊臣秀吉による小田原征伐が始まると、義胤は秀吉に謁見し、所領を安堵されました。豊臣政権下では、佐竹義宣と親交を深め、朝鮮の役にも従軍しました。1600年の関ヶ原の戦いでは、大坂に嫡子を残し、自らは所領の守りを固めました。戦後、徳川家康の天下となると、義胤は関ヶ原での行動を咎められ、一時改易されます。しかし、嫡子・三胤（後の利胤）の訴訟運動や、徳川家重臣の尽力により、相馬氏は再興を許されました。

1612年、家督を利胤に譲り隠居。大坂の陣では、病に倒れた利胤の代わりに自ら出陣しました。1635年に88歳で死去。その遺体は、伊達氏の勢力圏である北向きに埋葬されたと伝えられています。

伊達氏との抗争

義胤は、伊達氏との間で激しい抗争を繰り広げました。特に、伊達政宗の代になると、両者の対立は決定的となり、数々の戦いを繰り広げました。しかし、義胤は常に冷静沈着で、合戦では自ら先頭に立って敵陣に突撃する勇猛さを見せました。1581年には、伊達政宗の初陣となった矢野目の戦いで大勝。その後も、小深田の戦いなどで伊達軍を撃破しました。

しかし、伊達氏の勢力が増大すると、相馬氏は苦境に立たされます。1589年の摺上原の戦いで蘆名氏が滅亡すると、伊達氏は会津地方、中通り地方を制圧し、相馬氏の領土にも侵攻を始めました。しかし、義胤は決して諦めず、秀吉の伊達氏討伐令を利用して伊達氏と戦い、領土を回復しました。

豊臣政権下

小田原征伐後、義胤は豊臣政権下で所領を安堵されました。秀吉の死後、相馬氏は関ヶ原の戦いにおいて、直接的な軍事行動は避け、所領の警備に専念しました。戦後、徳川家康の天下となると、相馬氏は関ヶ原での行動を理由に改易されます。しかし、嫡子の三胤の活躍によって、改易は撤回され、所領は安堵されました。

人物・逸話

義胤は、勇猛果敢な武将として知られています。合戦では、常に先頭に立って敵陣に突撃し、その武勇は敵にも恐れられました。また、義胤は武士道精神に篤く、人質を取るような卑怯な行為を嫌ったと伝えられています。義胤は、伊達政宗との間で多くの戦いを繰り広げましたが、その一方で、政宗を高く評価していたと言われています。晩年、義胤が江戸城に登城した際、政宗がわざわざ輿に乗らずに見送ったという逸話が残っています。この逸話から、二人の間には、単なる敵対関係を超えた、武将同士の尊敬の念があったことがうかがえます。

義胤の書状は非常に少ないため、「筆不精」と評されることがあります。しかし、彼の行動や遺された逸話からは、その実直で勇猛な人柄が伝わってきます。

相馬義胤は、戦国時代から江戸時代にかけての激動期を生き抜き、相馬氏の存続に尽力した名将でした。その勇猛果敢な戦いぶりと、武士道精神に忠実な生き様は、後世に語り継がれています。

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