相馬義胤 (相馬中村藩主)

相馬義胤

江戸時代初期、陸奥相馬中村藩の第二代藩主として藩政を担ったのが、相馬義胤（そうま よしたね）である。元和五年（一六一九年）に生を受け、慶安四年（一六五一年）三月五日（新暦四月二十四日）に三十三歳という若さでこの世を去った。

幼き藩主の誕生

相馬義胤は、初代藩主である父・相馬利胤（としたね）の長男として誕生した。母は徳川秀忠の養女であり、土屋忠直の異父妹にあたる岡田元次の娘である。幼名は虎之助と称された。官位は従五位下を叙任し、長門守から大膳亮へと転任している。正室には内藤忠重の娘を迎えている。

義胤はわずか七歳という幼さで家督を継ぐこととなった。これは、寛永二年（一六二五年）九月二日に父利胤が急逝したことによるものである。幼年の藩主を支えるため、祖父である相馬義胤（初代藩主利胤の父、隠居後の同名）が後見役として藩政を補佐した。寛永三年（一六二六年）十月三日には従五位下長門守に叙任され、寛永十三年（一六三六年）十二月二十九日には大膳亮に転任している。

江戸の大火での奮闘

義胤の治世において特筆すべき出来事の一つに、江戸での大規模な火災がある。寛永十八年（一六四一年）一月二十九日（新暦三月十日）、江戸京橋桶町より発生したこの火災（桶町火事）は、当時の江戸市中に充分な消火体制が整っていなかったこともあり、たちまち延焼し大火となった。幕府は諸大名に火消役を命じ、義胤もまた「所々火消」としてこの任務にあたることになった。

義胤は自らの手勢を率いて消火活動の最前線に駆けつけ、果敢に消火にあたった。しかし、懸命な作業中に不運にも落馬し、重傷を負うという災難に見舞われた。この大火では、消火活動の総指揮を執っていた大目付加賀爪忠澄も、陣頭指揮中に煙に巻かれ殉職するなど、多くの犠牲者が出ている。

早逝と家督の継承

藩主として藩政を担い、江戸での火消役も務めた義胤であったが、慶安四年（一六五一年）、急な病により志半ばで世を去った。不幸にも男子の後継者がいなかったため、家督を継がせる者を選ぶ必要が生じた。

義胤には娘である亀姫がおり、土屋利直の次男である土屋直方を迎えていた。義胤は娘婿である土屋直方を養子とし、自身の跡を継がせることを定めた。直方は名を相馬忠胤（ただたね）と改め、相馬中村藩の第三代藩主となった。亀姫は忠胤の正室となっている。

相馬義胤の墓所は、現在の福島県南相馬市にある同慶寺と、東京都の青山霊園（1イ7-4-7）にある。短い生涯ながら、幼少での家督継承、そして江戸での大火における負傷といった出来事を経験した藩主であった。

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