県 (インドネシア)

インドネシアにおける県、カブパテン（kabupaten）は、リージェンシー（regency）とも呼ばれ、州に次ぐ地方行政区画です。日本語で基礎自治体と訳されることもあります。カブパテンは、いくつかの郡（クチャマタン）に分けられます。

語源と歴史

「リージェンシー」という言葉は、オランダ領東インド時代に遡ります。当時は「ブパティ」と呼ばれる摂政が統治しており、これをジャワ語で「カブパテン」と称しました。ブパティは、植民地化以前のジャワ島における地方領主の称号でした。オランダが小さな君主国を廃止すると、ブパティは最上位の伝統的権威者となりましたが、実質的にはオランダの支配下にありました。

ブパティの語源は、サンスクリット語の「ブーミパティ（土地の主人）」を略したものです。この称号は、シュリーヴィジャヤ王国時代の碑文にも見られ、地方統治者の称号として使用されていました。「アディパティ（公爵）」や「スナパティ（将軍）」などの関連する称号も存在しました。

独立前の状況

ジャワ島では、複数の県をまとめた「レジデンシー」が設けられ、ヨーロッパ人の住民が長を務めました。レジデントは、ブパティとの関係において特権的な立場にあるように見えましたが、実際にはオランダ当局の指示に従う必要がありました。両者の関係は複雑で、法的・軍事的な権力はオランダが握っていましたが、ブパティは住民統治において重要な役割を担っていました。

1945年のインドネシア独立後、ブパティやカブパテンは、レジデンシーの下位に位置付けられる行政区画となりました。

独立後の変化

スハルト政権崩壊後の1998年以降、地方行政の分割が進み、プメカラン（分割）と呼ばれる現象が起きました。1999年には脱中央集権関連法案が可決され、県や市の数は急増しました。1998年末には約300だった県が、2008年には490以上に増加しました。

この分割は当初歓迎されましたが、行政の細分化が経費を増大させるだけで、期待された利益をもたらさないという批判も出てきました。政府高官はプメカランの減速や停止を表明しましたが、地方政治家は新たな県の創設を主張しました。

1998年以降、統治の多くは、中央政府から県に派遣された官僚によって担われています。県は、インドネシアの人々に行政サービスを提供する上で重要な役割を果たしています。2005年には県知事や市長の直接選挙が始まり、それまでの地方議会選出方式に代わりました。

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