県民百貨店

株式会社県民百貨店（くまもと県民百貨店）

株式会社県民百貨店は、かつて熊本県熊本市に存在した百貨店です。その歴史は、熊本交通センターという日本最大級のバスターミナルの主要施設として開設されたことに始まります。この記事では、その誕生から閉店に至るまでの経緯、地域との関わり、そして再開発による終焉について詳しく解説します。

歴史と概要

県民百貨店は、旧熊本県庁跡地の払い下げを受けて開設された熊本交通センターの主要施設の一つでした。地下フロアは熊本交通センタープラザや辛島公園地下連絡通路と直結し、周辺施設や繁華街へのアクセスに優れていました。2階には熊本交通センターへの連絡通路があり、休憩スペースや展望エレベーターからは熊本市内中心部や熊本城を一望できました。

開業当初は「岩田屋伊勢丹ショッピングセンター」としてオープンしましたが、その後「くまもと阪神」となり、さらに「県民百貨店」へと名称を変更しました。「くまもと阪神」時代には「くまはん」という愛称で親しまれ、「疲れないデパート。」というキャッチコピーや、クマのキャラクター「おくまはん」を用いた広告展開も行っていました。

営業時間は基本的に10時から19時まででしたが、フロアによって異なり、年末年始などは変更されることもありました。1階には服飾雑貨や化粧品、和洋菓子店などが並び、関西圏のスイーツも取り扱っていました。6階には書店リブロ、7階には阪神タイガースショップがありました。

岩田屋伊勢丹の誕生から撤退まで

1973年、九州産業交通などが開設した熊本交通センターの一角に、岩田屋伊勢丹ショッピングセンターとして開業しました。しかし、地元百貨店の反対や家賃の問題などから経営は難航し、1993年には伊勢丹が撤退、熊本岩田屋として営業を続けましたが、累積赤字が膨らみ、2003年に閉店しました。

くまもと阪神の誕生

岩田屋の撤退後、地元出身の松本烝治氏が中心となり、新たな百貨店設立の動きが始まりました。九州産業交通や熊本県、熊本市などの支援を受け、2003年2月、「くまもと阪神」として再スタートを切りました。阪神百貨店との提携により、商品仕入れや人材育成などの支援を受け、初年度から黒字を達成するなど順調な経営を続けました。

くまもと阪神としての営業

阪神百貨店のノウハウを活かし、食品売場の強化や「デパイチ」と呼ばれるデパ地下のような売場を設けました。また、阪神タイガースの優勝セールなど、地域に根ざしたイベントも積極的に開催し、集客に貢献しました。2008年からは経済産業省から直営の認可を受け、県民百貨店友の会が阪神みどり会から友の会業務を引き継ぐなど、経営の独立化を進めました。

店名も県民百貨店へ

阪神百貨店との業務提携契約満了に伴い、2011年2月23日、「県民百貨店」へと名称を変更しました。今後は髙島屋が中心となって形成しているハイランドグループに加盟し、流行情報収集やテナント招致などのノウハウ確保の軸足を高島屋系列に移し、地元産品の強化や新たな取り組みを行い、自立した経営を目指しました。

桜町再開発に伴う立ち退きから閉店へ

2008年、熊本桜町地区の再開発事業が始まり、当店もその対象となりました。再開発後の複合ビルへの再出店を模索しましたが、規模縮小などの条件が合わず、2014年8月、営業継続を断念し、2015年2月28日に閉店しました。閉店時には約5万人が来店し、多くの人々に惜しまれながらその歴史に幕を閉じました。

閉店に伴う従業員やテナントの動き

閉店後、従業員の一部は鶴屋百貨店に移籍しましたが、多くの従業員が再就職先を探すことになりました。また、当店や周辺のテナントは、代替店舗の提供などを熊本市や九州産交グループに求めましたが、実現には至りませんでした。

跡地周辺の再開発

当店跡地は再開発され、2019年に「熊本城ホール」が開業しました。これは、MICE施設（国際会議やイベントなどを行う施設）を含む複合施設として、熊本市の新たなランドマークとなっています。

沿革

2002年10月25日 - 株式会社県民百貨店設立
2003年2月23日 - くまもと阪神開店
2011年2月23日 - 店名を「県民百貨店」に変更
2015年2月28日 - 閉店

県民百貨店は、その名前の通り、熊本県民に愛された百貨店でした。再開発のため閉店となりましたが、その歴史は熊本の街に深く刻まれています。

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