県満天雄

県 満天雄（あがた まんてんゆう）は、短い生涯の中で独特の詩世界を築いた日本の詩人です。1906年（明治39年）9月26日に福岡県で生まれ、1922年（大正11年）7月12日に15歳という若さでこの世を去りました。

生い立ちと教育

福岡市に生まれた後、父親の仕事に伴い幼少期を旧満州で過ごします。1912年には家族と共に福岡へ戻り、翌1913年には東京へと転居しました。

東京では、はじめ日本橋区箱崎小学校に入学しましたが、1914年には麹町区の麹町小学校へ移り、ここを卒業しました。1919年には、現在の明治大学付属明治高等学校・中学校にあたる明治中学校に進学します。

詩作活動の開始と病

明治中学校に在学中、県満天雄は独学で詩を作り始めました。若くして文学への深い情熱を燃やし始めますが、1921年、学校の遠足からの帰途で雨に濡れたことが原因で体調を崩し、およそ3週間にわたり病床に伏すことになります。一度は回復の兆しを見せたものの、再び病状が悪化して入院が必要な状態となり、療養生活を余儀なくされました。

最期と遺稿

病状がやや落ち着き、再び通学できるまでに回復しましたが、担当医師の勧めもあり、療養のために気候の温暖な千葉県安房郡北条町（現在の館山市北条地区）へ転地療養することになりました。しかし、その地でも病は進行し、1922年、詩作活動中に路上で突然倒れ、危篤状態に陥り入院します。病名は急性脳膜炎と診断され、意識が戻ることなく、短いながらも情熱に満ちた生涯を閉じました。

遺稿集とその評価

県満天雄が遺した瑞々しい詩の数々は、父である県左吉氏によってまとめられ、『狂恋の女』と題された遺稿集として1922年に刊行されました。しかし、この作品は生前に世に知られることなく、また刊行後も長く埋もれたままで、人々の記憶から遠ざかっていました。

時を経て、文芸評論家の山下武氏が偶然古書店でこの遺稿集を発見し、その詩が持つ独自の世界観や、早世した若き才能の輝きに深く感銘を受けました。山下氏による紹介や評論活動によって、県満天雄の存在とその作品は再び光を浴び、広く文学愛好家の知るところとなりました。彼の詩は、夭折の天才詩人として後世に語り継がれています。

著書

『狂恋の女』県左吉 編 1922年

参考文献

山下武 著『夭折の天才群像―神に召された少年少女たち』本の友社 2004年

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