真宗学寮

真宗学寮とは

真宗学寮は、広島県広島市西区南観音に位置する、浄土真宗本願寺派の私塾です。宗教法人としての認可も受けており、略称として「学寮」とも呼ばれています。1906年（明治39年）の創設以来、授業料不要という理念を貫き、宗学を学びたい人々に広く門戸を開放してきました。また、真宗学寮に併設されている広島仏教学院は、浄土真宗本願寺派の僧侶および教師を育成する機関として、本山からも認可を受けています。現在、真宗教団の中で私設の学徒教育の場として機能しているのは、真宗学寮と大阪府高槻市の行信教校のみであり、その存在は非常に貴重です。

沿革

創設期

真宗学寮は、1906年5月に、初代学頭である髙松悟峰を中心に創設されました。当初は西向寺内に置かれ、「地方で誰でも宗学が学べる研鑽道場」という理念のもと、無料で受講できる体制が整えられました。創設時の発起人には、高橋貫籍、大洲順道、鷲山南随、観山綜貫、青原智水、藤峯徹正、菅瀬徹照、五条尽識、細馬卓雄、藤沢大道といった人々が名を連ねています。

1923年（大正12年）には、広島仏教学院が併設され、本山からの認可を受けました。1926年（大正15年）には、南観音に移転しています。この時、髙松悟峰を慕う人々によって「仏教宝章会」が設立されました。後に「真宗学寮宝章会」と改名されたこの組織は、聴聞・布教活動を展開し、機関誌『宝章』を発行。各地で出張講会を開催するなど、活発な活動を行いました。最盛期には、広島市内だけでなく、呉や瀬戸内島嶼部、さらには山口、福岡、大分、熊本、韓国、ブラジルにまで支部が拡大し、77支部、会員数約6300人に達しました。1930年（昭和5年）には、財団法人としての認可も受けています。

戦中・被爆・戦後の復興

第二次世界大戦中の経済統制下、1938年（昭和13年）頃に『宝章』は廃刊となり、活動も制約を受けました。1939年（昭和14年）7月には、髙松悟峰が逝去し、藤澤教聲が学頭に就任します。1945年（昭和20年）8月6日、広島は原子爆弾の被害を受け、学寮の建物も半倒壊しましたが、焼失は免れ、被爆者の救護所となりました。

戦後の混乱の中、学寮と広島仏教学院の講義は早期に再開されました。1950年（昭和25年）には宝章会によって『宝章』も復刊。1953年（昭和28年）の宗教法人法施行に伴い、単立の宗教法人として新たな組織編成が行われました。1957年（昭和32年）には講堂と寄宿舎が本格的に修復され、1965年（昭和40年）には「仏教研究会」が結成され、西向寺を会場として仏教と真宗の基礎講座が開かれました。

1950年（昭和25年）に復刊していた『宝章』誌は、編集上の困難などから1968年（昭和43年）に途絶えますが、1977年（昭和52年）に別冊号として再復刊し、以後、年刊誌として発行されています。2006年（平成18年）には、創立100周年記念行事が盛大に行われました。

開講科目

真宗学寮では、朝学と夜間部の二部制で授業が行われています。朝学は午前9時から12時まで、夜間部は午後7時から9時までです。開講日は不定期であり、講堂内の掲示板に表示されます。主な開講科目は以下の通りです。

『本典』（親鸞著『教行信証』の講読）
『和讃』
『大経』（『仏説無量寿経』の講読）
『論註』
『往生要集』
『選択集』（親鸞が選定した七高僧の著作の講読）
『釈義大綱』（髙松悟峰著）
『入阿毘達磨論』

広島仏教学院では、以下の科目が開講されています。

安心論題
真宗概論
三経要義
七祖要義
正信偈要義
和讃要義
仏教概論
各宗要義
インド仏教史
中国仏教史
日本仏教史
真宗史
宗教学概論
勤式伝道関係
勤式作法
寺と教団
布教法

行事

真宗学寮では、創立記念講会（6月1日～5日）と報恩講（10月1日～5日）の期間中、会読（かいどく）が行われます。会読とは、経典などを複数人で読み、問答形式で議論し理解を深める形式です。問者と答者に分かれて対座し、議論の進行に合わせて上座へ交代していくのが特徴です。上座にはより経験豊富な者が座るのが通例です。現在、会読が実施されるのは、本山の安居や行信教校の専精舎などごく少数であり、真宗学寮における会読は非常に貴重な機会となっています。

所在地

〒733-0035
広島市西区南観音2丁目8-15

参考文献および参照

『安芸門徒　念仏者の人間像』広島文化叢書3　P108「真宗学寮　悟峯学頭」朝枝竜雲　広島文化出版　1973年
「真宗学寮創立100周年記念パンフレット」

外部リンク

公式サイト

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