真昼の用心棒

マカロニ・ウェスタンの佳作として知られる1966年のイタリア映画、『真昼の用心棒』は、ホラー映画の巨匠として名高いルチオ・フルチが監督した数少ない西部劇の一つです。

物語は、主人公トム・コーベットが、かつての故郷である村へ数年ぶりに戻るところから始まります。母親の死後、村を離れ、流れの用心棒として生計を立てていたトムは、旧友キャラダインからの「大至急帰郷せよ」という切羽詰まった手紙を受け取り、故郷の土を踏む決意をします。

しかし、彼を出迎えたのは、思い出の故郷とは全く異なる光景でした。村全体が、冷酷非情な大牧場主スコットとその一味によって完全に牛耳られていたのです。トムの実家である牧場もまた、スコットに不法に奪われ、村人たちは彼の横暴な支配の下で苦しんでいました。スコットの手下たちは傍若無人に振る舞い、村の平和は失われていました。

トムは、この状況を目の当たりにしながらも、まず兄であるジェフの安否を確かめようとします。葬儀屋からジェフの居場所を聞き出したトムは、遂に兄と再会を果たします。しかし、そこで彼が見たのは、希望を失い、酒に溺れ、荒れ果てた生活を送るジェフの姿でした。トムは村の現状やこれまでの出来事について兄に尋ねますが、ジェフも、そして彼らの乳母であるメルセデスも、多くを語ろうとしません。ただ、「すぐにこの村を出るべきだ」とだけ忠告するにとどまります。

彼らの言葉に戸惑いを覚えつつも、トムは村の酒場へと足を運びます。そこで思わぬ形でジェフと再会しますが、ジェフはスコットの手下たちとトラブルを起こし、一方的に袋叩きにされてしまいます。兄が嬲り者にされる姿を見たトムは、堪忍袋の緒が切れ、手下たちに反撃します。しかし、トムの圧倒的な力を見た彼らは、戦意を喪失したかのようにその場から逃げ去るのでした。

酒場を出たトムは、自身を呼び寄せた友人キャラダインの家に向かいます。彼から事の真相を聞き出そうとしますが、トムの目の前で、キャラダインはスコットの手下に襲われ、命を落としてしまいます。さらに、彼の妻子までもが犠牲となる悲劇に見舞われ、トムは激しい怒りに駆られます。

事態を打開するため、トムは単身スコットの牧場に乗り込み、直接対話を試みます。しかし、そこで待ち受けていたのは、スコットの息子であるスコット・ジュニアでした。父にも劣らぬ残忍さを持つジュニアによって、トムは凄惨な鞭打ちの拷問を受け、満身創痍となります。その非道な振る舞いを見かねたスコット自身が制止に入り、トムはなんとか命拾いし、ジェフの元へ戻ります。

深い傷を負いながらもジェフの家で休むトムでしたが、再び悲劇が訪れます。スコット・ジュニアの手下が現れ、トムとジェフを長年見守ってきた乳母メルセデスが殺されてしまうのです。愛するメルセデスを失ったことで、荒んでいたジェフの中に眠っていた復讐心が呼び覚まされます。ジェフは遂に、トムと共にスコットへの復讐を決意します。

スコット牧場へ向かう道中、トムとジェフはスコットに遭遇します。そこでジェフは、トムにとって衝撃的な事実を告白します。「お前の本当の父親はスコットなのだ」と。出生の秘密を知り動揺するトムに対し、スコットは自身とは似ても似つかぬ粗暴で残虐なジュニアを嫌悪しており、トムに全財産を譲り、共に暮らしたいと語りかけます。しかし、運命は皮肉にも彼に味方しませんでした。その場でスコットはジュニアの手下によって撃たれ、息子との再会を果たすことなく絶命します。

実父の死を目の当たりにしたトムと、復讐に燃えるジェフは、力を合わせ、スコット牧場に立てこもるジュニア一味の掃討を開始します。壮絶な銃撃戦の末、二人はい一味を皆殺しにし、遂にジュニアを追い詰めます。

最終的な決着をつけるため、トムは銃をジェフに預け、徒手空拳でジュニアとの闘いを挑みます。激しい肉弾戦の中で、隙を突かれたトムは、屋敷の屋上から突き落とされそうになります。しかし、トムに足を掴まれたジュニアはバランスを崩し、屋上から転落。凄絶な最期を遂げるのは、他ならぬ彼自身でした。

こうして、血塗られた復讐劇は終わりを告げます。トムは、全てが終わった後、ただ茫然と酒瓶を握りしめたまま立ち尽くす兄ジェフの傍らに、静かに歩み寄っていくのでした。

この映画は、家族の絆、裏切り、そして復讐という普遍的なテーマを、マカロニ・ウェスタンならではの乾いた暴力描写と緊迫感あふれる演出で描き出しています。特にルチオ・フルチ監督らしい容赦ない描写は、見る者に強い印象を残します。

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