真野善一

真野善一：日本の産業デザインを牽引した巨匠

真野善一(1916-2003)は、20世紀日本の産業デザイン史において重要な役割を果たした人物です。東京府（現在の東京都）出身の彼は、東京高等工芸学校（現在の千葉大学）卒業後、華々しいキャリアを歩み始めました。

卒業後は商工省（現在の経済産業省）に入省し、陶磁器試験所で研鑽を積みます。その後、高島屋東京支社の設計部に所属するも、程なく退社。様々な職を経験した後、母校である千葉大学の教授として再び教育の場に戻ります。

真野氏の転機は1951年に訪れます。松下幸之助氏に招聘され、当時設立されたばかりの松下電器産業（現在のパナソニック）デザイン工業部門に所属することになったのです。この部門は、後の日本の家電デザインを大きく変える中心となり、真野氏はそこで才能を開花させました。

冷蔵庫、扇風機、二次電池など、私たちの生活に欠かせない数々の電化製品のデザインに携わり、部門の課長にまで昇進。その卓越したデザインセンスと指導力によって、松下電器産業のデザイン部門の強化に大きく貢献しました。

企業における活躍に加え、真野氏は業界団体においても指導的な役割を果たしました。1954年には日本インダストリアルデザイン協会の理事長に就任。日本のデザイン界全体の発展に尽力しました。また、松下電器産業内では、意匠センター所長も務め、デザインの質向上に尽力しました。

教育者としての顔も持ち合わせていた真野氏は、1977年から1986年まで武蔵野美術大学の教授として後進の育成にも力を注ぎました。長年に渡り、学生たちにデザインの真髄を伝授し、多くの優秀なデザイナーを輩出しました。

彼の功績は数々の賞によって認められています。1953年には毎日デザイン賞工業デザイン賞にノミネートされ、1957年には彼が所属した工業デザイン部門意匠課が毎日デザイン賞産業賞を受賞しました。これらの受賞は、真野氏のデザインに対する深い造詣と、その高い実力を示すものです。

真野善一氏の生涯は、日本の産業デザインが発展していく過程そのものでした。企業人として、教育者として、そして業界団体の中心人物として、彼は日本のデザイン界に多大な貢献を果たし、その功績は後世に語り継がれるべきものです。彼のデザイン哲学は、現在も多くのデザイナーに影響を与え続けていると言えるでしょう。

著書に『木のとり』があります。彼の深い感性と、デザインに対する情熱を窺い知ることができる一冊と言えるでしょう。

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