瞬きもせず (漫画)

紡木たく『瞬きもせず』：山口県を舞台にした青春群像劇

『瞬きもせず』は、紡木たくによって描かれた日本の漫画作品。集英社の『別冊マーガレット』で連載され、山口県を舞台にした高校生たちの恋愛や日常、葛藤を描いています。

作品概要

物語は、主人公である小浜かよ子と、サッカー部の紺野芳弘を中心に展開されます。二人の恋愛模様を軸に、家族、友人、進路、そして地元に対する複雑な感情など、多感な時期を田舎のゆったりとした時間の中で過ごす高校生たちの姿が、山口弁を交えて描かれています。作中に登場する豊央高校は、山口県立山口高等学校がモデルとなっています。

作者の紡木たくは、修学旅行で訪れた山口県の空や山の美しさに感動し、本作の執筆を決めたといいます。連載にあたっては、実際に山口県の高校に通い、サッカー部の練習にも参加するなど、徹底した取材を行いました。連載終了後も山口県に滞在するなど、この地への愛着を深めています。

『瞬きもせず』は、少女[[漫画]]の世界に地方社会を取り入れた記念碑的作品として評価されています。くらもちふさこは自身の作品『天然コケッコー』について、本作の影響があったことを語っています。批評家の大塚英志は、主人公たちが東京へ出て、故郷に戻るという結末について、彼らの子供じみた夢や希望が終わる物語であると評し、凡庸さの中に着地する物語を描ききった紡木の才能を評価しています。

ストーリー

物語は、小浜かよ子がクラスメイトの紺野芳弘に告白され、交際を始めるところから始まります。互いに惹かれ合いながらも、素直になれない二人は、友人たちの協力を得ながら徐々に絆を深めていきます。高校生活を通じて、家族の問題や将来への不安を抱えながらも、かけがえのない日々を過ごしていきます。

紺野はサッカーに情熱を注ぎ、東京でのプレーを夢見るようになります。一方、かよ子は都会への憧れと故郷への愛着の間で葛藤します。卒業後、二人は東京へ向かいますが、かよ子は母親の病気をきっかけに帰郷を決意します。それぞれの道を歩み始めた二人は、やがてお互いの大切さを再認識し、紺野はかよ子と共に故郷で生きることを決意します。かよ子は地元の短大に編入し、紺野は実家の花屋で働きながら子供たちにサッカーを教え、二人は再び交際を始めます。

登場人物

小浜かよ子： 本作の主人公。テニス部に所属し、紺野に告白される。
紺野芳弘： サッカー部員。明るい性格で、かよ子と交際を始める。
藤井美つ子： かよ子の親友。明るく他人思い。
水谷輝哉： 紺野の親友。お調子者な性格。
箕輪： サッカー部監督。かつては東京の強豪校で監督をしていた。
相下龍二： サッカー部員。無愛想な性格。
小浜一雄： かよ子の父。自動車販売店で整備士をしている。
小浜梅代： かよ子の母。かよ子の理解者。

作品の舞台

作品には、山口県内の風景が繊細に描かれています。岩国駅、岩国城、小郡駅などが登場し、主な舞台は小郡周辺であることが示唆されています。豊央高校は架空の地名である中央市に位置しているという設定です。

『瞬きもせず』は、地方に生きる高校生たちのリアルな姿を描き出し、多くの読者の共感を呼びました。青春時代の輝きと切なさを描いた本作は、今もなお色褪せることなく、読み継がれています。

もう一度検索