矢原神明宮

矢原神明宮：安曇野の歴史と文化を語る神社

長野県安曇野市穂高に位置する矢原神明宮は、天照大神を祀る県社です。古くからこの地を見守り、歴史と文化を深く体現する神社として知られています。

古代からの歴史と発展

『和名類聚抄』にもその存在が記される矢原神明宮は、信濃国安曇郡矢原郷の中心地に鎮座していました。矢原御厨の総鎮守として、平安時代から鎌倉時代にかけて、周辺の郷村の発展を支える重要な役割を担っていました。

神社周辺からは、古代の生活を垣間見ることができる貴重な遺跡が発見されています。平安時代の住居跡や、土師器、灰釉陶器、鉄鎌などの遺物が出土し、当時の生活様式を知る手がかりとなっています。さらに、複数の館跡も確認されており、その中には室町時代の代官屋敷跡と推定される場所も含まれています。これらの遺跡は、矢原神明宮が古代から中世にかけて、政治・経済の中枢として機能していたことを示唆しています。南の堀内は検校庁があった場所、北の堀内は室町時代の代官屋敷跡と推定されています。これらの遺構は、矢原神明宮の歴史と周辺地域社会の変遷を理解する上で、重要な情報源となっています。

社殿と神事

現在の社殿は、安永5年（1776年）に建築された本殿を中心に構成されています。本殿の他に、幣殿、拝殿、宝殿、神楽殿などが整備され、荘厳な雰囲気を醸し出しています。大正時代に現在の拝殿が新造される以前は、幣殿の位置に御門屋があり、参道と共に、御厨神明の形式を伝えているとされます。社地の広さは東西20間、南北18間にも及び、その広さからも、この神社が地域社会において重要な位置を占めていたことが分かります。

元禄2年（1689年）に寄進された狛犬の棟札からは、「神明宮」と呼ばれていたことが確認できます。かつては「伊勢神明社」と呼ばれていた時期もあったようです。

例祭日は9月23日。現在も地域住民によって大切に守られ、神事が執り行われています。

指定と記録

明治5年（1873年）には村社に、昭和21年（1946年）1月10日には県社に指定され、その歴史的・文化的価値が認められています。

参考文献

『長野県百科事典』 1974年 信濃毎日新聞社
『信州の文化シリーズ 寺と神社』 1981年 信濃毎日新聞社
* 『信州の神事』 1990年 銀河書房

矢原神明宮は、単なる神社としてだけでなく、安曇野の歴史と文化を語る上で欠かせない存在です。その歴史的建造物や出土遺物、そして現在も受け継がれる神事は、未来へと続く地域のアイデンティティを象徴しています。

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