矢口祐人

矢口祐人（やぐち ゆうじん）氏は、1966年生まれの日本のアメリカ文化学者です。東京大学副学長、東京大学グローバル教育センター長、東京大学大学院情報学環教授という要職を歴任されています。

北海道札幌市白石区で生まれ、英文学者である矢口以文氏を父に持ち、キリスト教メノナイトの家庭で育ちました。幼少期には、アメリカ・ニューヨーク州での生活経験があり、多様な文化に触れる機会を得ています。

北海道札幌南高等学校を卒業後、北海道大学に入学しましたが、3年次に中退し、アメリカのゴーシェン大学に編入しました。1989年に同大学を卒業（英語専攻、TESOL副専攻）後、1991年にウィリアム・アンド・メアリー大学大学院修士課程を修了されました。その後、1999年にはウィリアム・アンド・メアリー大学で博士号を取得されています。

1995年に北海道大学言語文学部専任講師として教鞭を執り始め、1998年には東京大学大学院総合文化研究科助教授に就任されました。2007年に同研究科の准教授、2013年には教授へと昇進。2019年からは東京大学大学院情報学環教授を務めています。

矢口氏の研究分野はアメリカ文化、特にハワイの歴史と文化に焦点を当てています。著書には、『ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で』、『ハワイとフラの歴史物語 踊る東大助教授が教えてくれた』、『憧れのハワイ 日本人のハワイ観』などがあり、ハワイ研究における第一人者として知られています。特に『憧れのハワイ 日本人のハワイ観』は、2011年にヨゼフ・ロゲンドルフ賞を受賞するなど、高い評価を得ています。また、アメリカの宗教や文化に関する著書もあり、『奇妙なアメリカ　神と正義のミュージアム』では、アメリカ社会における宗教と正義の概念について深く考察しています。

教育者としても熱心であり、東京大学ではグローバル教育の推進に尽力されています。2022年には東京大学副学長（グローバル教育推進）に就任、2023年には東京大学グローバル教育センター長に就任し、国際的な教育プログラムの発展に貢献されています。また、著書『なぜ東大は男だらけなのか』では、日本の大学におけるジェンダー不均衡の問題に焦点を当て、社会的な課題にも積極的に取り組んでいます。

矢口氏の著作活動は多岐にわたり、共著や翻訳も多数手がけています。共著には、『現代アメリカのキーワード もうひとつのハワイガイド』、『入門ハワイ・真珠湾の記憶』、『真珠湾を語る 歴史・記憶・教育』などがあり、様々な視点からアメリカ文化や歴史を考察しています。翻訳書には、サラ・M.エヴァンズの『アメリカの女性の歴史 自由のために生まれて』、アリス・ベーコンの『明治日本の女たち』などがあり、海外の研究を日本に紹介する役割も担っています。

矢口祐人氏は、研究者、教育者として、多岐にわたる分野で活躍を続けており、アメリカ文化、ハワイ研究、そしてグローバル教育の発展に大きく貢献している人物と言えるでしょう。

主な著書リスト
『ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で』（中公新書、2002年）
『ハワイとフラの歴史物語 踊る東大助教授が教えてくれた』（イカロス出版、2005年）
『憧れのハワイ 日本人のハワイ観』（中央公論新社、2011年）
『ハワイ王国 カメハメハからクヒオまで』（イカロス出版、2011年）
『奇妙なアメリカ　神と正義のミュージアム』（新潮選書、2014年）
『なぜ東大は男だらけなのか』（集英社新書、2024年）

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