矢瀬遺跡

矢瀬遺跡：縄文時代の息吹を今に伝える貴重な史跡

矢瀬遺跡は、群馬県利根郡みなかみ町に位置する、縄文時代後期から晩期にかけての重要な遺跡です。利根川沿いの河岸段丘上に位置し、1992年からの発掘調査によって、当時の集落の様子が鮮やかに浮かび上がりました。遺跡は、住居域、共同作業場、墓域、祭祀場という、縄文時代の集落を構成する主要な要素が近接して発見された点が大きな特徴です。この遺跡は、国の史跡に指定されており、その歴史的価値は高く評価されています。

発掘調査で見えてきた縄文人の暮らし

発掘調査では、四隅袖付炉を持つ建物を含む22棟もの竪穴建物跡が発見されました。これは、当時の住居の構造を知る上で貴重な資料となっています。また、敷石や立石列、水場や水路を持つ共同作業場からは、人々が協力して生活を営んでいた様子がうかがえます。110基近い配石墓群が集まる墓域からは、当時の埋葬方法や死生観を知ることができます。さらに、直径50センチメートル前後の巨木を半切して並べた巨木柱列（関東地方初の出土例）と、その内側に3つの立石からなる石組の祭壇をしつらえた祭祀場は、当時の祭祀の様子を具体的に示しています。

矢瀬遺跡が語る縄文時代の集落像

矢瀬遺跡の特筆すべき点は、住居、作業場、墓地、祭祀空間という、縄文時代の集落遺跡の特徴を示す区域が、狭い範囲から分かりやすい形で発掘されたことです。水場近くに散乱したトチやクルミなどの木の実、祭祀場や墓地、居住域から出土した石冠、土偶、管玉、勾玉、土器、石鏃などは、当時の生活や文化を豊かに物語っています。これらの出土品は、縄文時代の集落の様子を具体的に再現することを可能にし、研究者にとっても貴重な資料となっています。

親水公園としての整備と出土品の展示

現在、矢瀬遺跡を含む一帯は親水公園として整備され、一般の人々が気軽に訪れることができるようになっています。遺跡の周辺環境を楽しみながら、縄文時代の歴史に触れることができる貴重な場所です。また、出土品はみなかみ町月夜野郷土歴史資料館にて展示されており、より深く矢瀬遺跡について学ぶことができます。

参考文献

戸沢充則「矢瀬遺跡」（『国史大辞典 15』吉川弘文館、1996年）ISBN 978-4-642-00515-9
三宅敦気「矢瀬遺跡」（『日本歴史大事典 3』小学館、2001年）ISBN 978-4-095-23003-0

外部リンク

* 矢瀬遺跡（公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団）

矢瀬遺跡は、縄文時代の集落の構造や生活様式、精神文化を理解するための重要な手がかりを与えてくれる、かけがえのない遺跡です。この貴重な史跡を訪れ、古代の人々の息吹を感じてみてはいかがでしょうか。

もう一度検索