矢筈

矢筈（やはず）を用いた掛軸の飾り方

掛軸を床の間などに飾る際、踏み台を使わずに手軽に飾ることができる道具として知られるのが「矢筈（やはず）」です。正式名称は「掛け棹（かけざお）」または「掛物棹（かけものざお）」と呼ばれ、1メートル前後の竹製の棒状の道具です。

矢筈の構造

矢筈は、竹の棒の先端に、掛軸の紐（掛緒）を引っ掛けるための独特な金具が取り付けられています。この金具は二股に分かれており、それぞれの先端がU字型に加工されています。このU字型の部分が掛緒を確実に固定する役割を果たします。シンプルながらも、掛軸を安全に吊るすための工夫が凝らされています。竹の素材は軽くて扱いやすく、また適度な強度も兼ね備えているため、この道具に最適な素材と言えるでしょう。

名前の由来

「矢筈」という名称は、矢の尾羽根を支える部分のV字型の形状に由来しています。このV字形の形状は、矢筈の金具の形状とよく似ていることから、転じてV字形に加工されたものを指すようになったと考えられています。古来より矢は狩猟や戦闘において重要な道具であり、その形状が様々な道具の名前の由来として用いられてきた歴史がうかがえます。

矢筈の使い方

矢筈を用いて掛軸を飾る手順は、以下の通りです。

1. まず、掛軸の掛緒を矢筈の先端のU字型金具に掛けます。この時、掛軸を巻くための紐（巻緒）は後ろに垂らしておきます。
2. 左手で掛軸を支えながら、掛軸を少しだけほどきます。
3. 矢筈をゆっくりと持ち上げ、掛軸を掛けてある金具に掛軸の紐を引っ掛けます。
4. 掛軸がしっかりと金具に掛かっていることを確認したら、矢筈を取り外します。
5. 最後に、掛軸をゆっくりと下までほどいていきます。

このように、矢筈を使うことで、高い位置にある掛軸を安全かつ容易に飾ることができます。 特に、高齢者や体の不自由な方にとって、踏み台を使わずに掛軸を飾ることができるのは大きな利点と言えるでしょう。

まとめ

矢筈は、一見シンプルな道具ですが、その構造や名称の由来、そして使用方法には、古来からの知恵と工夫が凝縮されています。掛軸を飾る際の安全性を高め、作業を容易にするこの道具は、日本の伝統文化を象徴するアイテムの一つと言えるでしょう。 掛軸を飾る際には、ぜひ矢筈を活用して、その便利さと伝統の技を感じてみてください。 また、矢筈を使うことで、掛軸をより丁寧に扱う意識も高まるのではないでしょうか。

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