矢野二郎

矢野二郎：近代日本の商業教育の開拓者

矢野二郎（やの じろう、1845年2月21日 - 1906年6月17日）は、幕末から明治時代にかけて活躍した日本の外交官、教育者、そして実業家です。旧幕臣の家に生まれ、西洋の学問をいち早く学び、国際的な舞台で活躍しました。その後、日本の商業教育の基礎を築き、多くの人材を育成しました。その生涯は、日本の近代化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

若き日の挑戦

1845年、矢野二郎は幕臣の家に次男として生まれました。幼少期から開明的な父の影響を受け、西洋の学問に興味を持つようになりました。16歳で英語を学び始め、尺振八や益田孝といった生涯の友を得ます。1861年には、幕府の外国方訳官に抜擢され、外交交渉の現場で活躍しました。1863年には第2回遣欧使節団に随行し、海外の文化や制度に触れる機会を得ました。

新政府での活躍と転身

1868年、幕府が瓦解すると矢野は官を辞し、翻訳業や貿易仲介業で成功を収めます。その後、森有礼の推薦で外務省に入り、二等書記官としてアメリカに渡り、駐米代理公使も務めました。しかし、1875年に官を辞し、新たな道へと進む決意をします。

商業教育への情熱

官を辞した矢野は、商業教育の必要性を強く感じていました。同じくアメリカから帰国した森有礼が福沢諭吉の賛同を得て設立した「商法講習所」に当初から参加し、その後、所長に就任しました。この講習所は、後に東京商業学校、そして高等商業学校へと発展し、一橋大学の前身となります。矢野は、その草創期から校長として、日本における商業教育の基礎を築きました。教育者としての情熱を注ぎ、多くの優れた人材を育成しました。また、共立女子大学の創設にも尽力し、女子教育にも貢献しました。

晩年と遺産

矢野の教育者としての功績は多大なものでしたが、晩年には学校運営をめぐり学生との対立が生じ、1893年に校長を退任することとなります。しかし、その後も実業界で活躍し、貴族院勅選議員にも選ばれました。1906年に62歳でその生涯を閉じましたが、彼が創設に携わった東京高等商業学校（現在の一橋大学）は、日本の経済界を牽引する多くの人材を輩出し続けています。没後、その功績を讃え、一橋大学には彼の銅像や記念館が建設されました。

年譜

1845年：江戸に生まれる。
1861年：幕府の外国方訳官に任官。
1863年：第2回遣欧使節に随行。
1868年：官を辞し、翻訳所を自営。
1870年：外務省二等書記官として渡米。
1876年：東京府商法講習所所長に就任。
1884年：東京商業学校校長に就任。
1887年：高等商業学校校長に就任。
1893年：高等商業学校校長を退任。
1904年：貴族院勅選議員に選出。
1906年：死去。

家族

矢野二郎の家族もまた、日本の近代化に貢献した人々が多くいました。

父：富永惣五郎は開明的な思想の持ち主でした。
兄：富永冬樹は幕臣、後に判事として活躍しました。
妹：栄子は益田孝の妻となりました。
妹：益子は中山譲治の妻となりました。
妻：ゑいは大久保利通の親族にあたります。

参考文献

島田三郎編著 『矢野二郎伝』
山口昌男著 『知の自由人たち』
『日本近代教育史事典』
『日本近現代人名辞典』


矢野二郎は、激動の時代を生き抜き、日本の近代化に大きく貢献しました。その功績は、教育者としてだけでなく、外交官、実業家としての幅広い活動を通して、現代の私たちにも大きな示唆を与えてくれます。

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