知林ヶ島

知林ヶ島（ちりんがしま）

鹿児島県指宿市西方に浮かぶ知林ヶ島は、干潮時に砂州で陸地と繋がる陸繋島（トンボロ）として知られています。この独特な地形は、自然の神秘を感じさせ、多くの人々を惹きつけています。

島名の由来

知林ヶ島の名前は、かつて島に茂っていた松林に由来します。夜間、航行する船乗りたちが、風に揺れる松の音を頼りに航海したことから「知林ヶ島」と呼ばれるようになりました。しかし、残念ながら松林は松くい虫の被害により、その姿を失いつつあります。

地理

知林ヶ島は、鹿児島湾（錦江湾）の入口付近に位置し、湾内最大の島です。指宿市本土の田良浜から約800m沖にあり、周囲は約3km、面積は約60ヘクタール、最高点は約90mの無人島です。島の北には、小島あるいは知林小島と呼ばれる小さな島も存在します。知林ヶ島は、指宿カルデラの外輪山の一部とされており、地質的には約10.5万年前に形成された阿多火砕流による溶結凝灰岩の上にシラスが堆積しています。

特に注目すべきは、3月から10月頃の干潮時に出現する砂州です。この砂州は約800mの長さで、大人であれば片道20分程度で歩いて渡ることができます。砂州の出現時間は最大で4時間程度で、1時間以上出現する日は年間190日、2時間以上出現する日は年間86日となっています。ただし、台風などの影響で砂州が流されることもあり、その場合は潮流によって砂が運ばれてくることで再び形成されます。砂州の付け根付近には、旧日本海軍の水上機の残骸が今も残されています。

島内には、環境省レッドデータブックで絶滅危惧II類に指定されている希少種、ナンゴクカモメヅルが生息していることも確認されています。

歴史

かつて知林ヶ島は、サツマイモなどの耕作地として利用されていました。島には耕作地を管理する家族が居住し、その他の耕作者は本土から船で通っていました。1957年には灯台が建設されました。

1963年から1967年にかけて、森村グループの森村産業が、森村学園の林間研修のために島全体の土地を買収しました。この買収により島は無人となりました。しかし、その後土地はほとんど利用されることなく放置され、1980年代半ば頃から森村産業側が指宿市に買収を求めるようになりました。

価格交渉が難航しましたが、森村産業側の会社清算などの都合により、最終的に1999年8月に指宿市が買い取ることになりました。土地開発公社による買収を経て、2008年に市有地となっています。また、森村産業からは、本土の魚見岳周辺の土地が市に寄付されました。

2001年には、「指宿知林ヶ島の潮風」が、かおり風景100選に選定されています。

観光

現在の知林ヶ島は、展望台や遊歩道が整備され、観光地として多くの人々が訪れます。魚釣りや潮干狩りを楽しむことができ、手つかずの自然が残る島内は、訪れる人に安らぎを与えてくれます。市は今後、避難小屋やビジターセンター、船着場などの整備も計画していますが、2023年11月現在、まだ完成には至っていません。

砂州が現れる時間は限られており、満潮時には水没します。また、砂州周辺の潮流は速く危険なため、訪れる際には十分な注意が必要です。一方で、砂州が「架け橋」や「きずな」を連想させることから、縁結びの島としても知られており、指宿青年会議所では男女の出会いイベントも開催されています。

その他

知林ヶ島は、映画やドラマのロケ地としても利用され、その美しい風景が多くの人々に知られるきっかけとなりました。



参考文献

指宿市役所総務課市誌編さん室 編『指宿市誌』指宿市長 肥後 正典、1985年10月25日。  pp.676 - 678
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『鹿児島県』 46巻、角川書店〈角川日本地名大辞典〉、1983年3月。  p.433
市長対話集会報告書 (PDF) pp.4 - 5



関連事項

かおり風景100選
青い鳥（ロケ地）



外部リンク

知林ヶ島～ちりんがしま～ | いぶすき観光ネット

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