知識社会学

知識社会学の概要

知識社会学とは、知識と社会との相互作用に焦点を当てた社会学の一分野である。この学問は、どのように特定の知識や思想が社会的に受け入れられるのか、またその結果、社会はどのように形成されるのかを研究する。知識社会学の基本的な問題意識は、「ある知識が社会でどのように信じられ、受け入れられるか」ということにあり、これは特定の社会的条件がどのように知識の受容に影響を与えるのかを考察することを目的としている。

この分野の起源は1920年代にさかのぼり、特にドイツではマックス・シェーラーやカール・マンハイムによって確立された。彼らの研究は、この分野の発展に多大な影響を与えており、アメリカでもロバート・キング・マートンなどが独自の進展を遂げている。ここで扱う「知識」は、意識、認識、思想、世界観、さらには知的活動といった広範な概念を含む。時には、知識という言葉の代わりに「思想」や「世界観」という表現が用いられることもある。

知識社会学の特徴

知識社会学の独特の点は、知識そのものの妥当性を検証する哲学的アプローチとは異なり、知識がどのように形成され、どのようにして「真実」とされるに至るのかを探求することである。これにより、知識の社会的基盤や、知識を持つことが人々や社会に与える影響を分析することが可能となる。重複または関連する分野として、精神史、イデオロギー論、知識人論などが挙げられる。

マックス・シェーラーの貢献

知識社会学という用語を初めて使用したマックス・シェーラーは、彼の研究を文化社会学と実在社会学に分けた。シェーラーは、人間の精神的活動を志向する行為を対象にした知識社会学と、実存的衝動に基づく行動を調査する実在社会学という二元論に従って、二つの社会学の共働作用を強調した。彼は、様々な知識が同時に存在し、それぞれ特有の役割を果たすことを認識していた。特に、知識には「動機」、「認識の精神作用」、「目的」、「担い手」、及び「歴史的運動形式」があるとした。

カール・マンハイムの視点

カール・マンハイムは、シェーラーの非歴史的視点を批判し、歴史的制約に基づく知識の分析を試みた。彼は、マルクス主義のイデオロギー論をさらに発展させ、知識社会学の基盤として位置づけた。マンハイムによれば、イデオロギーは存在の制約を受けるものであり、あらゆる思想的立場において同様の制約が存在するとされる。彼は、特定の立場にだけ基づくのではなく、広範な視点を持つことで、一般的な社会史・思想史の研究方法としての知識社会学を形成すべきだと主張した。

マンハイムは、知識を思想的な武器としてではなく、存在に制約された一般的な「視座構造」として理解することを提唱した。また、階級的帰属から解放された流動的なインテリゲンツィア（知識人の集団）を、知識の存在拘束の担い手として求め、それにより特権的な知識人からの自由を確保しようとした。彼の観点は、組織からの解放が自由な発言を可能にし、結果的に真の知識の探求へと導く重要性を強調している。

参考文献

• - 『社会学講座11 知識社会学』　徳永恂編　東京大学出版
• - 『自己コントロールの檻』　森真一　講談社
• - 徳永惇「知識社会学の成立と展開」徳永ほか『社会学講座11：知識社会学』東京大学出版会　1976. pp.17-43.

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