知財創造教育

日本における知財創造教育

日本における知財創造教育とは、知的財産を創造する能力と、創造された知的財産を尊重する態度を育成する教育です。ここで言う知的財産とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物など、人間の創造的な活動によって生み出されるものを指します。

知財創造教育の経緯

教育分野においては、昭和52年（1977年）の学習指導要領改訂で「創造的能力の育成」が掲げられ、知識偏重からバランスの取れた教育への転換が図られました。その後、教育基本法の改正を通じて、課題発見能力、知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力などが重視されるようになり、社会からの要請に応える形で知財教育への需要が高まりました。

知的財産行政分野では、平成14年（2002年）に知的財産基本法が交付され、「創造力の豊かな人材の育成」が目標として掲げられました。これを受け、知的財産戦略本部が設立され、「知財推進計画 2016」において、以下の3つの方向性が示されました。

1. 国民一人ひとりが知財人材となることを目指し、発達段階に応じた系統的な教育を実施
2. 社会との関わりや知識の活用を視野に入れた創造性発展の促進
3. 地域・社会との協働（産学官連携による支援体制構築）の実現

さらに、「日本再興戦略2016」では、第4次産業革命を見据えた知財人材育成が提唱され、IT利活用やプログラミング教育の義務化など、具体的な施策が打ち出されています。

知財創造教育の種類

知財創造教育は、主に以下の3つに分類されます。

1. 発明創造教育：発明・考案を創造する能力と、それを尊重する態度を育成
2. デザイン創造教育：意匠や著作物（美術、音楽、建築、ソフトウェアなど）を創造する能力と、それを尊重する態度を育成
3. 知的財産権制度の知識教育：知的財産を法的に保護する制度（特許法、著作権法など）の概要、知的財産権の種類（特許権、著作権など）、取得・権利行使の手続きに関する知識を提供

知財創造教育の課題

知財創造教育の推進には、いくつかの課題があります。

教育現場で知財創造教育を実践できる教員の育成
児童・生徒が興味を持って学べる教材の開発
地域コンソーシアムの活動の地域への浸透
知財創造教育の効果を社会に示すこと
創造性育成のための基礎学力習得の効率化
「異能」や「異才」を持つ人材の活用
知財創造能力の定量評価技術の開発と、それを用いた検定試験の実施

知財創造教育の政策と実施体制

知財創造教育の政策は、知的財産基本法に基づいて内閣に設置された知的財産戦略本部が実施しています。「知財推進計画 2016」と「日本再興戦略2016」を具体化するために「知財創造教育推進コンソーシアム」が設立されました。このコンソーシアムは、全国の学校への知財創造教育の普及、地域社会や産学官連携を促進し、地域ごとの支援体制の構築を目指しています。平成30年（2018年）時点で、北海道、東北、関東など8つの地区で地域コンソーシアムが立ち上がっています。

2021年1月には、全国の関係者による情報共有を目的とした知財創造教育連絡協議会が発足し、より一層の連携が期待されています。

まとめ

知財創造教育は、これからの社会を担う人材育成において重要な役割を担っています。創造的な能力を伸ばし、知的財産を尊重する心を育むことで、社会の発展に貢献することが期待されます。

関連情報

関連文献
「知財創造教育」の内容 (内閣府 知的財産戦略推進事務局)
「知財創造教育」の取組状況について (内閣府 知的財産戦略推進事務局)
中等教育段階における知財創造教育の推進に資する教材に関する調査研究報告書 (一般社団法人 発明推進協会)
新しい社会と知財のビジョン ～「価値デザイン社会」を目指して～ (住田 孝之)
知財教育を考える（後編） なぜ今、知財教育か？ (三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

外部リンク
『知財創造教育』 - コトバンク

法令
教育基本法 - e-Gov法令検索
学校教育法施行規則 - e-Gov法令検索
知的財産基本法 - e-Gov法令検索

知財創造教育の関連団体等
日本知財学会
日本創造学会
* 日本教育学会

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