短歌研究社

短歌研究社は、日本の出版業界において、短歌専門の出版社として長年にわたり重要な役割を担ってきました。その主要な事業は、月刊誌『短歌研究』の刊行、そして著名歌人から新鋭まで幅広い歌集や歌書の出版です。

現在の短歌研究社は、1962年（昭和37年）10月に設立されました。創業者である小野昌繁が、それまで月刊総合誌『短歌研究』の出版を担っていた日本短歌社から事業を引き継いだことに始まります。これにより、短歌研究社は『短歌研究』という、当時既に長い歴史を持っていた雑誌の発行元となりました。

『短歌研究』という雑誌自体の歴史は、短歌研究社の設立よりもさらに遡ります。創刊は1932年（昭和7年）で、当初は改造社によって1931年10月号を第1号として世に出されました。改造社での刊行は1944年7月号（通巻13巻7号）まで続きました。その後、一時的な休止期間を経て、1944年11月からは日本短歌社が発行元を引き継ぎ、改めて第1巻第1号として再スタートを切りました。日本短歌社での刊行は1962年9月号（通巻19巻9号）まで続いた後、同年10月号（通巻19巻10号）からは短歌研究社が発行を引き継ぎ、現在に至るまでその歴史を継続しています。このように、『短歌研究』は改造社、日本短歌社、そして現在の短歌研究社と、三つの出版社を経てその命脈を保ってきたのです。

特に、前身である日本短歌社時代には、後の著名作家となる中井英夫が編集者として在籍し、短歌史において特筆すべき功績を残しました。1954年（昭和29年）には、新しい才能を発掘するための企画「短歌研究五十首詠」を開始し、ここから中城ふみ子や寺山修司といった、その後の歌壇、さらには日本の文芸界全体に大きな影響を与えることとなる傑出した歌人たちがデビューを果たしました。これは、短歌研究社の歴史においても、新人育成という点で重要な出来事として語り継がれています。

短歌研究社は、出版事業に加え、日本の短歌文化の振興と次世代を担う歌人の育成にも積極的に取り組んでいます。その活動の柱の一つが、権威ある文学賞の運営です。

短歌研究賞: 歌壇における中堅以上の実力ある歌人を顕彰する賞。
短歌研究新人賞: 新進気鋭の歌人を発掘し、育成する賞。
現代短歌評論賞: 短歌に関する優れた評論を評価する賞。
塚本邦雄賞: 夭折の天才歌人、塚本邦雄の名を冠した賞。

これらの賞を通じて、既存歌人の功績を称えるとともに、新しい才能を見出し、育成することに尽力しており、歌壇全体の活性化に貢献しています。

近年では、伝統的な短歌の世界に新たな風を吹き込む試みも行われています。『短歌研究』の創刊90周年を記念し、2021年からは「アイドル歌会」を開催。これは、編集長の國兼秀二らが選者を務め、現代のアイドルたちが短歌を詠むという異色の企画であり、短歌の可能性を広げるユニークな取り組みとして注目を集めています。

また、雑誌の刊行体制にも時代の変化に合わせた見直しが行われます。2024年10月には、翌2025年から『短歌研究』が隔月刊行となることが発表されました。具体的には、1月・2月合併号、3月・4月合併号という形で、年間6回の発行へと移行します。これは、出版業界を取り巻く環境の変化に対応し、持続可能な形で質の高い雑誌刊行を続けていくための重要な決断と言えます。

組織としては、短歌研究社は日本の大手出版社である講談社を中心とする音羽グループの一員です。これにより、経営基盤の安定や、グループ各社との連携による様々なシナジー効果が期待できます。

このように、短歌研究社は、長年にわたり『短歌研究』を核として日本の短歌文化を支え、歴史ある雑誌の継承、新人歌人の育成、そして時代に合わせた新たな試みを通じて、日本の歌壇において不可欠な存在であり続けています。

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