短篇キネマ 百色眼鏡

『短篇キネマ 百色眼鏡』は、椎名林檎が2003年1月22日に発表した映像作品です。3rdアルバム『加爾基 精液 栗ノ花』の世界観を基に、短編映画として映像化されました。DVDとして東芝EMIから発売され、同時発売されたシングル「茎 (STEM) 〜大名遊ビ編〜」が主題歌となっています。

制作の背景

当初、椎名林檎はアルバムの世界観をより深くリスナーに理解してもらうため、収録曲をシングルカットして「茎 〜STEM〜」と同時発売することを希望していました。しかし、スタッフに相談したところ、シングルカットではなく映像作品の制作を提案され、最終的にこの提案を受け入れることになりました。当初、椎名が提案した内容は、喫茶店を舞台に猫が絡む物語で、彼女自身は女給仕役を希望していたそうですが、スタッフが用意した内容は全く異なるものだったと、後のインタビューで語っています。

劇中で使用されている音楽は、『加爾基 精液 栗ノ花』の収録曲を部分的に加工したものが用いられています。主題歌は「茎 〜STEM〜」ですが、実際のエンドロールではアルバムに収録されている「おだいじに」が使用されています。また、椎名林檎本人は、中学生時代の演劇部以来の演技に挑戦しています。

タイトルである『百色眼鏡』は、「万華鏡」の別名であり、初回盤のCD EXTRA仕様では、パソコンで再生すると撮影風景の写真などが閲覧可能となっています。

あらすじ

物語は、駒形という人物から、舞台女優である葛城楓の身元調査を依頼された天城が、彼女の調査を進めるうちに、その神秘的な魅力に惹かれていくところから始まります。天城は自分の身分を隠して楓に近づき、親密な関係を築きます。ある夜、天城は楓の屋敷に忍び込み、壁の穴から彼女の部屋を覗き見ると、そこには楓とは別の女性の姿がありました。天城は「あの女は一体誰なのか？」という疑問を抱き、その女性の正体を突き止めようと行動を開始します。そして、天城はついに楓の正体に辿り着くことになります。

キャスト

葛城楓：小雪
天城：小林賢太郎
駒形：大森南朋
女：椎名林檎

スタッフ

企画・音楽：椎名林檎
原作：鷹野原均
脚本：伊東摩衣
監督：番場秀一

収録内容

1. 序章
2. 後姿
3. 膝枕
4. 人形
5. 終章
6. 特典映像

生睡映像
寫眞館

楽曲

主題歌:「茎 〜STEM〜 大名遊ビ編」
作詞・作曲：椎名林檎 編曲：森俊之
劇中曲:『加爾基 精液 栗ノ花』より
ドツペルゲンガー
おだいじに
やつつけ仕事
とりこし苦労
ポルターガイスト

その他

この作品と世界観を共有する演劇作品として、小林賢太郎プロデュース公演「LENS」があります。この演劇の音楽も椎名林檎が担当しています。「LENS」では、主人公を天城とし、脚本・演出を小林賢太郎自身が務めています。駒方も重要な役どころで登場し、大森南朋が演じています。「LENS」では、天城には天城茎太郎、駒方には駒方蓮司というフルネームが設定されています。また、他の登場人物の名前にも植物に関する言葉が用いられており、『百色眼鏡』に登場する葛城楓とのつながりを示唆しています。

このように、『短篇キネマ 百色眼鏡』は、椎名林檎の音楽世界を映像で表現した、非常に芸術性の高い作品と言えるでしょう。

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