短絡

短絡（ショート）とは

短絡（たんらく）とは、英語でshort circuitといい、電気回路の二つの点が、非常に低いインピーダンスで電気的に接続された状態を指します。一般的には「ショート」または「ショート回路」とも呼ばれています。これは、回路内に電球やモーターなどの負荷がなく、電源のプラス極とマイナス極が直接導線で繋がった状態をイメージすると分かりやすいでしょう。

短絡の現象

短絡状態では、回路内に大きな電流が流れ込みます。これにより、回路が過熱し、電池の消耗が激しくなるだけでなく、最悪の場合、火災を引き起こす可能性もあります。ただし、長い導線のコイルを用いた電磁石や、ニクロム線のような電熱線は、原理的にはショート回路と同じ状態ですが、コイルは発熱する性質を、電熱線は発熱することを利用したものです。

短絡による事故の危険性

短絡が発生すると、回路の誤動作や設計値を超える大電流が流れるため、半導体や抵抗器、コンデンサなどの部品が異常発熱し、焼損する危険性があります。高温による火傷や発煙による有毒ガスの発生、部品の破裂など、人体にも危険が及ぶ可能性があります。また、情報機器では、誤動作によるデータ消失も起こりえます。さらに、短絡によって部品が破損した場合、その原因箇所を特定することが難しく、修理に時間がかかることも少なくありません。

短絡の主な原因

短絡は、様々な要因によって発生します。主な原因は以下の通りです。

異物の接触: 金属製品やウィスカー（金属の微細な突起）、リード線の切れ端などが回路に接触することで短絡が発生します。特に、コネクタや端子、プリント基板のハンダ付け面など、接続部分がむき出しになっている箇所で起こりやすいです。また、災害や事故で損傷した家電製品や鉄道車両、電気自動車などが原因で発生する「通電火災」も、短絡が原因の一つです。
配線処理の不都合: 電線の接続において、より線（細い銅線を複数本より合わせたもの）を使用した場合、細い線の一部がはみ出し（これを「ヒゲ」と呼ぶことがあります）、それが短絡の原因となることがあります。配線処理を確実に行うことが重要です。
ハンダ付けの不良: プリント基板のハンダ付け時、ハンダの量が多すぎたり、ハンダが跳ねて飛び散ったり（「ハンダくず」とも呼ばれます）すると、本来接続されていない配線部分がハンダによって接続され、短絡が発生することがあります。特に複雑な回路では、目視での確認が重要になります。
誤接続・誤動作: コネクタや端子への配線の誤接続、スイッチの誤操作なども短絡の原因となります。コネクタによっては、着脱時に配線が短絡する構造のものや、切り替えスイッチの中には、操作時に出力端子間が短絡する構造（ショーティングタイプ）のものがあります。これらの場合は、ノンショーティングタイプのスイッチに交換するか、設計や操作時に注意が必要です。
部品の劣化: 電源回路において、コンデンサが劣化により絶縁抵抗が低下し、漏れ電流が流れて発熱し、さらに劣化が進んでコンデンサ内部で短絡が発生することがあります。この対策として、ヒューズやブレーカーなどの保護装置の設置や、定期的な点検・交換が挙げられます。

短絡の利用

短絡は、必ずしも悪いものではありません。例えば、科学実験では蓄電器（コンデンサ）に蓄えられた電気を放出させるために、意図的に短絡を利用することがあります。

短絡対策の重要性

短絡は、電気機器の故障や火災などの重大な事故につながる可能性があるため、その対策は非常に重要です。短絡を防ぐためには、適切な配線処理、ハンダ付け、コネクタの正しい接続、定期的な点検などが不可欠です。また、短絡が発生した場合に被害を最小限に抑えるために、ヒューズやブレーカーなどの保護装置を適切に設置することも重要です。

関連情報

短絡に関連する情報として、以下のようなものがあります。

電気回路: 電気の流れを制御するための回路全般。
電子回路: 電子部品を用いたより複雑な回路。
桜木町事故: 短絡が原因で発生した列車火災事故。
遮断容量: 回路を遮断する能力。
予期短絡電流PSSC: 短絡時に流れると予想される電流。
オームの法則: 電圧、電流、抵抗の関係を示す法則。
定格短絡電流: 回路が耐えられる短絡電流。

外部参考情報

* 短絡と地絡―その事故の原因と対策（ECCJ）

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