短絡評価

短絡評価（ショートサーキット評価）とは

短絡評価（short-circuit evaluation）とは、多くのプログラミング言語における論理演算子の評価方法の一つで、最小評価とも呼ばれます。この評価方法では、論理演算子の左辺（第一引数）を評価した結果によって、右辺（第二引数）の評価を省略するかどうかを決定します。これにより、プログラムの実行効率を向上させたり、エラーを回避したりすることが可能になります。

短絡評価の仕組み

論理演算子を用いた式 `A 演算子 B` があるとき、短絡評価では以下の様に動作します。

論理積（AND）の場合: 左辺 `A` が `false` と評価された場合、式全体の結果は必ず `false` となるため、右辺 `B` は評価されません。
論理和（OR）の場合: 左辺 `A` が `true` と評価された場合、式全体の結果は必ず `true` となるため、右辺 `B` は評価されません。

このように、左辺の評価だけで式全体の結果が確定する場合は、右辺の評価を省略することで、プログラムの実行時間を短縮できます。

各プログラミング言語における短絡評価

多くのプログラミング言語で短絡評価が採用されていますが、一部の言語や状況では異なる動作をします。

C/C++: 組み込み型に対する論理演算子は短絡評価されます。ただし、ユーザー定義型で `&&` や `||` をオーバーロードした場合は、短絡評価は保証されません。
Java: 短絡評価を行う `&&` や `||` の他に、ビット演算子としても使用される `&` や `|` もブーリアン型に対してオーバーロードされており、これらは短絡評価を行いません。
C#: 条件論理演算子はオーバーロードできませんが、ユーザー定義型で特定の演算子をオーバーロードすることで、短絡評価のような挙動を実現できます。
Visual Basic .NET: 短絡評価をサポートしています（以前のバージョンではサポートされていませんでした）。
ALGOL 68: `proceduring` という機能により、ユーザーが短絡評価の演算子を定義できました。

短絡評価の利点と注意点

利点

1. 効率的な処理: 不要な処理の実行を避け、実行時間を短縮できます。
2. エラー回避: 右辺が実行時エラーを引き起こす可能性がある場合、左辺の条件によって実行を抑制できます（例：ヌルポインタ参照の回避）。
3. コードの簡潔化: `if` 文の入れ子を減らし、より読みやすいコードにすることができます。

注意点

1. 副作用: 右辺に副作用のある式が含まれる場合、短絡評価によってその式が実行されない可能性があります。そのため、副作用を期待したコードは動作が変わる可能性があります。この問題を避けるためには、式の評価順序を調整したり、一度変数に格納してから論理演算を行うなどの対策が必要です。

短絡評価の例

以下は C言語での短絡評価の例です。

c
int a = 0;
int myfunc(int b) {
printf("myfunc called
");
return b;
}

if (a && myfunc(10)) { // aがfalseなのでmyfuncは呼ばれない
printf("true
");
}

int ptr = NULL;
if (ptr != NULL && ptr == 10) { // ptrがNULLの場合、ptrは評価されないのでエラーにならない
printf("ptr is 10
");
}

短絡評価の応用

短絡評価は、条件付きのコード実行に役立ちます。例えば、以下のPerlの例では、`open` が失敗した場合にのみ die を実行します。

perl
open(my $fh, "<", "filename") or die "Could not open file";

まとめ

短絡評価は、効率的で安全なプログラミングに不可欠な概念です。適切に活用することで、プログラムのパフォーマンスを向上させ、エラーを未然に防ぐことができます。しかし、副作用のある式を用いる場合は、短絡評価の動作に注意する必要があります。

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