石の宝殿

石の宝殿：謎に包まれた巨石遺構

石の宝殿とは、人工的な巨石が残る遺跡などに付けられた名称で、主に兵庫県と大阪府に５ヶ所存在します。この記事では、中でも特に有名な、兵庫県高砂市にある生石神社の「石の宝殿」を中心に解説します。

生石神社の石の宝殿

生石神社の石の宝殿は、宝殿山の山腹に位置し、巨大な石そのものが神体として祀られています。「鎮の石室（しずのいわや）」、「天の浮石（あめのうきいし）」とも呼ばれ、2014年には竜山石採石遺跡と共に国の史跡に指定されました。宮城県の鹽竈神社、宮崎県の霧島東神社と共に日本三奇の一つに数えられています。

概要

石の宝殿は、幅6.4m、高さ5.7m、奥行き7.2m、重さ推定500トンを超える巨大な石造物です。竜山石として知られる流紋岩質のハイアロクラスタイト（水中自破砕溶岩）の岩山を削り出して作られており、三方を岩盤に囲まれています。いつ、誰が、何のために作ったのかは、学術的には解明されていません。高砂市教育委員会が大手前大学史学研究所の協力を得て調査を行っており、2005年から2006年にはレーザーによる3次元計測を実施し、形状を詳細に調べています。

形状・特徴

形状は、平たい直方体を二つ縦に重ね、その間に小さな直方体を挟んだよう。側面にはピラミッドの頂上を切ったような突起があります。全体としては、家を横倒しにしたような形状と表現されます。背面中央には四角錐を切断した形の突起があり、旧型のブラウン管テレビに似ているとも言われています。

下部の岩盤は大きく窪んで池になっており、この池は旱魃でも枯れず、水位が海の潮位と連動するという伝承があります。「浮石」と呼ばれるのは、底部中央の支柱状の部分が死角となり、巨石が池に浮いているように見えるためです。石の上部には、創建時にはなかったと思われる雑木が生い茂っています。

周辺

巨石と周囲の岩盤の間には、人が一人通れる程度の通路があり、周回することができます（有料）。宝殿山の頂上へ続く歩道からは、石の宝殿全体を見下ろすことができます。

伝説

生石神社の社伝によれば、大穴牟遅神と少毘古那神が石造の宮殿を一晩で建てようとしたものの、播磨の土着の神の反乱により、未完成のまま鎮座することになったと伝えられています。『播磨國風土記』には、聖徳太子の時代に物部守屋が作った石であるという記述がありますが、時代考証的には矛盾があるとされています。

シーボルトのエピソードと松本清張の推理

幕末にはシーボルトが訪れ、詳細なスケッチを残しています。松本清張は『火の路』で、奈良県の益田岩船との関連を指摘し、石の宝殿が古墳用の未完成の石室であったという説を唱えました。この説は現在有力視されています。

アクセス

• - 鉄道：JR神戸線宝殿駅下車、徒歩約25分、またはじょうとんバスで「ふれあいの郷生石」下車後徒歩5分。

その他の石宝殿

• - 六甲山の石宝殿：六甲山頂近くに位置し、雨乞いの場として利用されてきた神社。
• - 石宝殿古墳：大阪府寝屋川市にある古墳。
• - 金剛山の石宝殿、葛城山の石宝殿：それぞれの山に存在する石宝殿。

石の宝殿は、その謎めいた存在感で、訪れる人々を古代のロマンへと誘います。

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