石の血脈

小説『石の血脈』の世界

『石の血脈』は、1971年に早川書房から出版された半村良によるSF伝奇ロマンである。この作品は、不老不死という人類の夢を実現しようとする特異体質者たちの暗躍を描いている。物語は、吸血鬼や狼男といったオカルト要素が豊富に織り交ぜられ、夢幻的な雰囲気を醸し出す。1972年には、第3回星雲賞（日本長編部門）を受賞し、その作品性が広く評価された。

あらすじ

物語の冒頭では、青木建設に勤務する新進気鋭の建築家、隅田賢也の妻、比沙子の失踪が描かれる。隅田は妻を探し、彼女の行方を追い求めながら、次第に怪しい酒場へとたどり着いていく。社長の青木雄策から妻の所在や自身の出向の話を聞かされた彼は、その後、東日銀行の会長、三戸田謙介が関与していることを知る。

隅田は、東日傘下の西域貿易に出向き、神奈川県の守屋で新たな建築プロジェクトの実地調査を行う。しかし、その地は隅田の師匠である今井潤造が変死した場所でもあった。次第に、隅田は三戸田が追い求める不死という野心に巻き込まれていく。

三戸田邸で、赤に統一された部屋で待つのは、彼の大学時代の恋人、椎葉香織であった。香織から出された真紅の液体を飲み干すことで、隅田は身体の自由を失い、異様な快楽の世界へと引き込まれていく。途中、彼は隣の部屋で比沙子が三戸田に抱かれる姿を目撃し、そのどちらかの感情が惑乱していく。

隅田は、その後も香織との官能的な関係に耽溺し続け、心のどこかで比沙子の帰りを待ちながらも、計画が進行していく。

一方、隅田の友人である伊丹英一は、失踪した隅田を探す中で、彼が西域貿易へ出向したことを突き止める。しかし伊丹は、連絡を取ることができずに途方に暮れていた。そんな折、彼の部屋にかかってきた電話が隅田からのもので、二人は再会を果たすことになる。

主な登場人物

• - 隅田賢也：青木建設設計第四課の課長。物語の主人公。
• - 隅田比沙子：賢也の妻で、物語の鍵となる人物。
• - 伊丹英一：賢也の友人で、職業は商業カメラマン。
• - 椎葉香織：賢也の大学時代の恋人。
• - 三戸田謙介：東日銀行会長で不滅を追求する男。
• - 青木雄策：青木建設の社長。

作風とテーマ

『石の血脈』は、文学的な描写と共にオカルト要素を取り入れ、緊迫感あるストーリー展開が特徴である。また、登場人物同士の人間関係や感情の葛藤が物語を奥深くしている。特に、不老不死や肉体の自由を巡るテーマは、読者に強い印象を与え、物語の中で描かれる禁断の快楽とその代償が強調されている。

この作品は、単なるSF小説を超え、人間の欲望や愛、裏切りの心理を深く掘り下げている。読者は、隅田の苦悩と自己探求の旅を共にしながら、この魅惑的で危険な世界に引き込まれていく。

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