石井康之

石井 康之

石井 康之（いしい やすゆき）は、1962年に日本で生まれたファッションデザイナーであり、同時にオブジェアーティストとしても活動する稀有な存在です。彼は自身の名を冠したメンズブランド「YASUYUKI ISHII」と、レディースブランド「Autre-Y（オウトル-イグレック）」を展開し、ファッション界に独自の足跡を残しています。

桑沢デザイン研究所で学んだ後、石井氏のキャリアはまずオブジェアーティストとしてスタートしました。その才能は早くから認められ、1987年には東京パルコで開催されたオブジェ展で山本寛斎賞を受賞します。翌年からはO-MuseumやEveryone's Galleryなど、国内外の様々な展覧会にオブジェを出展し、特に1989年の第16回現代美術国際展ではAU賞を獲得するなど、オブジェ作家として確固たる地位を築きました。同年にはニューヨークでも作品を発表するなど、活動の場を海外にも広げていきました。

1994年にファッションデザインへと軸足を移した石井氏は、1996年に株式会社アジアを設立し、自身の名を冠したメンズファッションブランド「YASUYUKI ISHII」を立ち上げます。東京コレクションでの発表を皮切りに、ブランドは国内外で急速に存在感を高めていきました。パリ、ミラノ、コペンハーゲン、ロンドンといった世界の主要ファッション都市で開催されるトレードショー（CPH展、T.B.C展、Who's Next展、Tranoi Homme、Milano White Homme、PITTI uomoなど）に積極的に出展し、国際的な評価を獲得していきました。2014年にはレディースラインとして「Autre-Y」をスタートさせ、デザインの幅をさらに広げています。

石井氏のデザインの根幹には、オブジェアーティストとして培われた自由な発想と、素材に対する深い探求心があります。彼の作品は、既存のファッションの枠に囚われない、非伝統的で革新的なアプローチが特徴です。特に、レザーパーツ、ワイヤー、ボルトといった通常衣服には用いられないような異素材を巧みに取り入れ、それらを一つ一つ手作業で組み上げていく製作手法は、彼のクリエーションの真骨頂と言えます。

こうした手仕事から生まれる服は、一見すると型破りでありながらも、現代的な感性と洗練されたディテールが融合しています。その繊細かつ複雑な製造プロセスは、高度な技術を持つ職人たちの支えによって成り立っており、石井氏自身も彼らの献身的な仕事に深い感謝を表明しています。

ブランド運営やコレクション発表に加え、石井氏は幅広い分野でその才能を発揮しています。国内外の著名なアーティストやミュージシャンのためのステージ衣装やプライベート衣装の制作、東京デザイナーズウィークにおける大型オブジェの製作、さらには自身の旗艦店や渋谷パルコの内装デザインなども手掛けてきました。

近年では、2022年に米国ワシントンD.C.のスミソニアン博物館で開催されたファッションイベントへの招聘や、ハンガリーのブダペストで行われたグローバル・サステナビリティ・ファッション・ウィークでの招聘ショーと展示など、国際的な舞台での活動も精力的に行っています。

石井康之のキャリアは、オブジェアートからファッションへとジャンルを越え、常に既成概念に挑戦し続ける独創性の追求に貫かれています。異素材の融合、丹念な手仕事、そして独自の美意識によって生み出される彼の作品は、単なる衣服を超えたアートピースとして、国内外のファッション関係者やセレブリティ、アーティストたちから強い支持と注目を集めています。その革新的なアプローチと探求心は、これからもファッションとアートの境界を超えた新たな表現を生み出し続けることでしょう。

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