石川栄吉

石川 栄吉

石川 栄吉（いしかわ えいきち）は、1925年3月26日に生まれ、2005年3月27日に逝去した日本の著名な人類学者です。社会人類学を専門分野とし、長年にわたり日本の学界に貢献しました。最終的な所属は東京都立大学（現首都大学東京を経て東京都立大学）であり、同大学の名誉教授の称号を得ています。

経歴

東京都で生まれた石川栄吉は、京都大学文学部史学科で歴史学を修めました。大学卒業後、研究者としての道を歩み始め、神戸大学で助教授、立教大学で教授を歴任しました。1972年からは東京都立大学の教授として、多くの学生の指導にあたるとともに、自身の研究活動を精力的に展開しました。1988年に東京都立大学を定年で退職し、名誉教授の称号が授与されました。定年後も教育への情熱は衰えず、中京大学で教授を務めました。また、日本民族学会（現在の日本文化人類学会）の会長を務めるなど、学会活動においても重要な役割を果たしました。

研究内容と業績

石川栄吉の研究は、人文地理学を基盤としつつ、特に人類学的な視点からオセアニアを含む南太平洋地域に焦点を当てて展開されました。この地域での綿密なフィールドワークを通じて、その社会、文化、人々の生活様式について深い洞察を発表しました。彼の研究は、従来の地理学的なアプローチに加え、人類学的な視点を取り入れることで、対象地域の理解をより多角的なものにしました。

長年の研究活動の成果は数多くの著作として結実しており、特に南太平洋に関する著作は高く評価されています。中でも、1984年に刊行された著書『南太平洋物語―キャプテン・クックは何を見たか―』は、イギリスの探検家キャプテン・クックの航海記録を手がかりに、18世紀の南太平洋世界を描き出した力作であり、同年に毎日出版文化賞を受賞するという栄誉に輝きました。この受賞は、彼の研究が学術界のみならず、広く一般読者にも受け入れられたことを示しています。

受賞と栄典

石川栄吉の学術的な貢献と功績は国内外で認められています。前述の1984年の毎日出版文化賞受賞に加え、2002年には日本の学術・文化への長年の貢献が称えられ、勲三等旭日中綬章を受章しました。これらの受賞と栄典は、彼の研究者としての優れた業績と、学界における指導的な立場を明確に示しています。

主な著作

石川栄吉は多くの重要な著作を残しています。代表的な単著としては、南太平洋研究の初期成果である『南太平洋の民族学』（角川選書、1978年）や『南太平洋―民族学的研究―』（角川書店、1979年）があります。受賞作である『南太平洋物語―キャプテン・クックは何を見たか―』の後には、『クック艦長は何を見たか―十八世紀の南太平洋―』（力富書房、1986年）として改題・再版されています。また、日本人とオセアニアとの関わりに光を当てた『日本人のオセアニア発見』（平凡社、1992年）や、異文化交流をテーマにした『海を渡った侍たち―万延元年の遣米使節は何を見たか―』（読売新聞社、1997年）、『欧米人の見た開国期日本―異文化としての庶民生活―』（風饗社、2008年／角川ソフィア文庫、2019年）なども重要な著作です。これらの著作を通じて、人類学、文化史、交流史といった幅広い分野に影響を与えました。

単著以外にも、石田英一郎、寺田和夫との共著による人類学の基礎的著作『人類学概説』（日本評論新社、1958年）や、寺阪昭信との共著『世界の国ぐに―世界をつくる国土と国民―』（大日本図書、1970年）があります。また、岩田慶治、佐々木高明との共編著として、『生と死の人類学』（講談社、1985年）を刊行するなど、共同での研究・執筆活動も行いました。

石川栄吉の研究と著作は、南太平洋地域への理解を深める上で貴重な貢献を果たし、後進の研究者たちに大きな影響を与えています。彼の学問的遺産は、今日においても読み継がれています。

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