石川重之

石川重之：華族子爵の生涯と晩年

石川重之は、1868年（慶応3年）に旧常陸下館藩士の家に生まれました。下館藩主であった父・総管の跡を継ぎ、1880年に家督を相続。1884年には子爵の爵位を授けられます。しかし、1887年には事情により爵位を返上。その後、1899年に再び子爵に叙せられ、華族としての人生を歩むこととなります。学習院で学んだ彼は、1899年に従五位、1917年には正四位に叙せられました。

戦前の石川重之は、不動産や公債、社債からの収入で裕福な生活を送っていました。年間1万5千円という莫大な収入で、芝居見物や旅行などを楽しみ、華やかな日々を過ごしたと伝えられています。しかし、戦後の急激な物価上昇により、蓄えは目減りしていき、生活は苦しくなっていきます。晩年は豊島区高松町で、孫の長男の給料と自身の菓子販売の収入を頼りに生活していたとされています。1949年には、生活の困窮から銭湯で他人の下着を盗もうとしたという逸話も残されています。

石川重之の趣味は日本音楽でした。住所は、茨城県真壁郡下館町、東京市下谷区中根岸町、豊島区池袋2丁目、豊島区高松町2丁目、東京府豊多摩郡落合村下落合と、生涯を通して幾度も転居しています。

彼の家族構成は、父である最後の下館藩主・総管をはじめ、妻には桂子（子爵・戸田光則の娘）ときい（山下彌太郎の養女）がいます。また、長男、二男、三男、四男、二女、三女、六女、七女、八女、庶子男という大所帯でした。二女は、妻の桂子の実家である戸田家に籍を移しています。

これらの情報は、公文書や人事興信録といった当時の記録を元にまとめられています。以下に、参考文献を列挙します。

参考文献

大蔵省印刷局編『官報 1899年10月31日』日本マイクロ写真、1899年
人事興信所編『人事興信録 第4版』人事興信所、1915年
大蔵省印刷局編『官報 1917年12月11日』日本マイクロ写真、1917年
人事興信所編『人事興信録 第6版』人事興信所、1921年
人事興信所編『人事興信録 第7版』人事興信所、1925年
維新史料編纂会編『現代華族譜要』日本史籍協会、1929年
人事興信所編『人事興信録 第10版 上』人事興信所、1934年
人事興信所編『人事興信録 第13版 上』人事興信所、1941年
帝国秘密探偵社編『大衆人事録 第14版 東京篇』帝国秘密探偵社、1942年
人事興信所編『人事興信録 第14版 上』人事興信所、1943年
* 『華族名簿 昭和18年7月1日現在』華族会館、1943年

石川重之の生涯は、華族としての栄華と、戦後の生活苦という、激動の時代を反映したものでした。彼の足跡は、近代日本の歴史を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。80歳の誕生日には、鈴木貫太郎や小笠原長生らと共に、皇室から御紋付木盃と酒肴料を下賜されたという記録も残っており、晩年まで社会的に注目されていたことがうかがえます。 彼の生活は、当時の華族や一般庶民の生活を知る上で貴重な証言となっています。

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