石川雲蝶:越後のミケランジェロ
石川雲蝶(いしかわ うんちょう)は、
1814年に
江戸で生まれ、
幕末から
明治初期にかけて主に
越後国(現在の
新潟県)で活躍した
彫刻家です。本名を安兵衛といい、若くして
江戸彫石川流の彫物師として名を馳せました。
生涯と作品
20代の頃には幕府御用勤めとなり、「石川安兵衛源雲蝶」を名乗るようになりました。その後、越後三条の本成寺の修築を機に、檀家総代の招きで越後へ移り住み、金物の町として知られる三条で
婿養子となり酒井姓を名乗りました。
雲蝶の作品は、
寺院の
彫刻を中心に、
欄間、天井画など多岐にわたります。中でも代表作として知られるのが、西福寺開山堂の天井を飾る「
道元禅師猛虎
調伏之図」です。この作品は、その迫力と色彩の鮮やかさから「越後日光」と称えられています。
その他にも、永林寺の
欄間彫刻、
秋葉神社奥の院の
彫刻、瑞祥庵の
金剛力士像など、越後各地に数多くの作品を残しました。これらの作品は、緻密な彫りと大胆な構図が特徴で、見る者を圧倒します。また、彼の作品は色鮮やかで、何層にも彫り重ねられた精巧な技術が用いられています。これらの作品からは、多才で真面目な人物像が伺えます。
雲蝶は、酒好きで、気分が乗らないと
鑿を握らなかったという逸話も残っていますが、写真や記録などの確実な資料はほとんど残っていません。しかし、彼の残した作品は、その卓越した技術と芸術性を今に伝えています。
再評価
近年、石川雲蝶の作品は再評価の機運が高まっています。そのきっかけとなったのは、
写真家・木原尚氏が1991年から『
新潟日報』で紹介記事を連載したことでした。その後、1993年には『越後の名匠 石川雲蝶』を刊行し、多くの人々に雲蝶の存在を知らしめました。
さらに、古美術鑑定家の
中島誠之助氏が、NHKの番組で雲蝶の作品を見て「越後のミケランジェロだ」と絶賛したことで、その名は全国に知れ渡ることになりました。
2011年には、西福寺境内に「石川雲蝶 顕彰の像」が建立され、彼の功績を称えています。この像は、檀家の人々の「雲蝶の作品を後世に伝えたい」という思いから始まり、多くの人々の協力によって実現しました。
雲蝶の作品は、
寺院だけでなく、個人宅にも数多く残されており、その総数は1000点を超えると言われています。これらの作品は、現在も多くの人々に愛され、越後の文化を語る上で欠かせない存在となっています。
2015年には、南魚沼雲蝶会が設立され、雲蝶に関する研究や情報発信が行われています。石川雲蝶の生誕200年にあたる2014年には、多くのイベントが開催され、彼の偉大な業績を振り返る機会となりました。
まとめ
石川雲蝶は、その卓越した
彫刻技術と独創的な作風で、越後の文化に大きな足跡を残しました。「越後のミケランジェロ」と称される彼の作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。彼の作品は、単なる美術品としてだけでなく、歴史と文化を伝える貴重な遺産として、今後も大切にされていくことでしょう。
参考資料
中島すい子『観光バスガイド中島すい子が案内する 石川雲蝶作品めぐりDVD』株式会社みらい、2015年8月。
外部リンク
越後のミケランジェロ 石川雲蝶(新潟観光ナビ)