石庫門

石庫門の魅力と歴史

石庫門（せきこもん）は、1860年代から上海で見られる伝統的な中洋折衷型の建築様式です。かつては9000棟以上が存在し、上海の住宅ストックの約60%を占めていましたが、現在ではその数は大幅に減少し、多くの住人が大型の共同住宅に移っています。石庫門は「里弄住宅」の一形態として分類されており、その独特の構造と歴史的背景は、多くの人々から注目されています。

構造の特徴

石庫門は一般的に2〜3階建ての連なりで、共用通路（中庭）を囲む形で配置されています。この構造は西洋式のテラスハウスやタウンハウスに似ていますが、高い煉瓦塀によって外部との区切りが強調されています。名前の由来は、強固な遮断壁に設けられた入口の「石庫」から来ています。

各住居は「弄堂」と呼ばれる直線の路地に沿って配置されており、入り口には装飾的な石のアーチや牌坊が設けられています。石庫門は伝統的な江南建築の要素と西洋建築の要素が融合したものであり、狭い通路の両側には住宅が立ち並び、各住居の中庭は太陽光を取り込み、家の中の換気を促進する役割を果たしていました。

歴史的背景

石庫門の起源は、地元の住宅開発業者が西洋式のテラスハウスを中国の事情に応じてアレンジしたことにあります。1843年、上海が条約港に指定された後、多くの労働者が流入し、その後の社会変動により住宅需要は急増しました。最初は木造の住宅が多く建てられましたが、火災の危険性から木造建築は禁止され、宅地造成業者は石庫門へと進化させました。

この新しい構造は、重量を支えるために煉瓦で覆った木の骨組みを持ち、中庭を囲むレイアウトが特徴的です。1890年代から1910年代にかけて、石庫門は上海の主要な住宅スタイルとして普及しました。社会的変化と中産階級の拡大により、路地の幅は広くなり、装飾もより精巧になりました。

現在の状況と文化遺産

2010年には「石庫門“里弄”建築の建造技術」が中国政府から国の無形文化遺産に認定され、文化的価値が再評価されています。石庫門はもともと住宅用途として使われていましたが、歴史的に商業活動や学校、娯楽施設も見られるなど、多様な機能を持っていました。特に食料雑貨店やレストラン、公衆浴場は今も石庫門の遺構に残っているものもあります。

近年では、古い石庫門を新しい商業施設や住宅として再開発するプロジェクトも行われていますが、これには住民との対立や文化の消失に関する懸念も伴っています。石庫門地域は、もともとの構造を失わない形で保存されたものと、違った形で再開発されたものとに分かれ、現代においてもその魅力を放っています。

まとめ

石庫門は、上海の文化的・歴史的な背景を知る上で欠かせない存在です。狭い路地や独特の構造が織りなす雰囲気は、多くの人々にとって憧れの空間となっており、観光客や学者たちが訪れる地域となっています。今後もその価値を保ちながら、訪れる人々に伝統と現代の融合した生活様式を体験させ続けてほしいものです。

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