テラスハウス

テラスハウスとは

テラスハウスは、共有の境界壁を持つ複数の住宅が横に並んでいる形式の低層住宅です。アメリカをはじめとして、多くの国で特有の呼称があり、アメリカでは「タウンハウス」や「ロウハウス」と称されることが多いです。

史上の背景

16世紀以降、特にヨーロッパの都市においてこのスタイルの住宅建設が盛んに行われるようになりました。南米や北米、オーストラリアなどにも影響を与え、グローバルに広まりました。産業革命以降には、都市部で働く労働者階級向けの手頃な価格の住宅として、大量に建設されました。これらの住宅は、アパートメントのように重ねられるのではなく、横に繋がっているため、各戸は独自の庭や専用の玄関を持つ特徴があります。通常、2階または3階建てとなっています。

また、2戸が連続した形態は「セミ・デタッチトハウス」（二戸一）と呼ばれ、完全に独立した1戸の住宅は「デタッチトハウス」や「一戸建て」として知られています。

オーストラリアのテラスハウス

特にオーストラリアでは、ゴールドラッシュの時代にシドニーやメルボルンでレンガ造のテラスハウスが多く建設されました。一般的に、前庭と裏庭が付いており、前庭は小さく、裏庭は比較的大きなスペースを確保しています。現在、これらのテラスハウスは交通の便が良い「Inner city」と呼ばれるエリアに位置しており、築100年以上の物件も多く、高値で取引されることがあります。

また、ロンドンのリージェンツ・パークにあるテラスハウスは、特に豪華な仕様で知られています。19世紀前半に設計されたこれらの住宅は、当時の著名な建築家ジョン・ナッシュなどの手によるもので、そのデザインの精巧さが際立っています。

日本におけるテラスハウス

日本においては、1958年に日本住宅公団によって東京都杉並区成田東に建設された公団阿佐ヶ谷住宅が特に有名です。この地域にある350戸の住宅の中で、232戸がテラスハウスとして建てられ、174戸の設計を前川國男が担当しました。しかし、これらの住宅は老朽化に伴い、2013年に解体されることとなりました。

その後、多摩ニュータウンでは1970年代以降に住宅の「量から質へ」の方針転換が進み、低層のテラスハウスが建設されるようになりました。この住宅様式は当時社会現象を引き起こしたドラマ『金曜日の妻たちへ』でも取り上げられ、広く認知されることとなり、人気を博しました。しかし、戸同士がつながっていることから、リフォームや修繕費用がかさむ場合が多く、また高層マンションの普及に伴い、新しい住宅地ではあまり見かけなくなりました。

しかし、個人宅の賃貸物件への転用などの小規模なプロジェクトにおいては、21世紀に入ると人口動態の変化と住宅供給の過剰感からテラスハウス形式が見直され始めています。今では賃貸住宅の価値を高める目的で、通常アパートとして使われることが多かった小規模物件がテラスハウス式に再構築されることも増えてきています。

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