石橋長英

石橋 長英

石橋 長英（いしばし ちょうえい、1893年4月26日 - 1990年9月25日）は、大正から平成にかけて活躍した日本の医学者。千葉県千葉市の出身である。

近代日本の医学教育及び医学研究の発展に寄与し、特に国際的な医学交流の分野で指導的な役割を果たした。

経歴

石橋長英の医学者としてのキャリアは、1918年に東京帝国大学で医学を修めたことから始まる。大学で高度な医学知識と研究手法を修得した後、教育と研究の道に進むこととなる。

1920年には東京女子医科大学の教授に就任し、若い世代の医学者や医療従事者の育成に力を注いだ。教育者として、彼は多くの学生に影響を与え、その後の日本の医療を支える人材を育て上げた。

医学の発展には国際的な視野が不可欠であると考えた石橋は、国際交流の推進にも積極的に関与した。1925年には、日本の医学のレベル向上と国際協力の促進を目的として、公益財団法人日本国際医学協会を組織した。この団体は、日本の医学界が世界の医学界と連携し、最新の知見を共有するための重要なプラットフォームとなった。

さらに、1936年からは日独医学協会の会長という重責を担った。この時期、日本とドイツは医学分野で密接な関係を築いており、石橋はその橋渡し役として、両国間の医学研究者や臨床医の交流、情報交換の促進に尽力した。長年にわたる彼の貢献は、日本の医学界が国際的な評価を高める上で重要な役割を果たした。

戦後も医学教育への情熱は衰えることなく、晩年には新たな学府の設立に関わることになる。1973年には、獨協医科大学の初代学長に就任し、その建学の精神に基づいた教育理念の確立と、大学の運営体制の整備に奔走した。新しい医科大学の礎を築いた功績は大きい。

栄典

医学分野における長年の功績と、特に国際交流における貢献が認められ、1973年にはドイツ連邦共和国功労勲章を受章した。これは、日独間の医学交流に尽力した石橋の業績が、国際的にも高く評価されたことを示している。

著作

石橋長英は、自身の研究や経験に基づいた著作活動も精力的に行った。主な著作には以下のようなものがある。

自著

『現代に生きるベルツ』：日本新薬より1978年10月に刊行された。エルヴィン・フォン・ベルツという明治期に来日したドイツ人医師の思想や業績を現代的な視点から考察したものであり、医学史への深い洞察を示している。
『薬と人間』：ライフサイエンス・ブックとしてスズケンより1982年11月に刊行。医学の根幹に関わる「薬」と、それを使用する「人間」との関わりについて論じた著作と推察される。

共著

『医学　お雇い外国人9』：1969年に鹿島研究所出版会から出版。小川鼎三との共著であり、明治維新以降、日本の近代化に貢献した医学分野の「お雇い外国人」に焦点を当てたシリーズの一冊である。
『母子栄養』：1960年に医歯薬出版から刊行。医学の中でも特に公衆衛生や小児科領域に関わる重要なテーマである母子栄養に関する専門書であり、当時の日本の栄養状態や医療状況について示唆を与える内容と考えられる。

訳書

* 『エルウィン・フォン・ベルツ』：Felix Shottlaenderの著書を翻訳したもの。大空社より1995年10月に刊行されている（ISBN 4-87236-490-2）。彼が敬愛し、その思想を探求したエルヴィン・フォン・ベルツに関する著作を日本に紹介することで、日本の医学史研究に貢献した。

石橋長英は、教育者、医学団体のリーダー、そして研究者・著述家として、日本の医学界に多大な貢献を残した。特に、医学の国際交流の重要性をいち早く認識し、その推進に力を尽くしたことは、今日の日本の医学が国際的な水準に達する上での礎の一つとなったと言える。1990年に97歳でその生涯を閉じるまで、日本の医学の発展を見守り続けた。

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