石母田正

石母田 正（いしもだ ただし）

石母田正（1912年9月9日 - 1986年1月18日）は、日本の歴史学界において顕著な業績を残した歴史学者であり、法政大学の名誉教授として知られています。彼の専門分野は主に古代史と中世史であり、その著作や論文は戦後の歴史学に広範な影響を及ぼしました。

経歴

彼は1912年に北海道札幌市で生まれましたが、その後宮城県の石巻市で育ちました。父親の石母田正輔は旧仙台藩に由来する政治家であり、石巻の町長や市長を務めたことでも知られています。彼は二高を卒業後、東京帝国大学の文学部哲学科に入学し、後の1937年に国史学科に転科して卒業します。

卒業後は冨山房や日本出版会での勤務を経て、朝日新聞で記者として働きました。1947年からは法政大学法学部の講師として教壇に立ち、1948年には教授に昇格します。その後、法学部長や附属図書館長などの職に就き、1981年に定年を迎えた後は名誉教授となりました。彼はまた、歴史学研究会の幹部としても活動していました。しかし1973年にパーキンソン病に罹り、晩年はこの病気との闘いを余儀なくされました。

業績

石母田の多くの論文や著作は唯物史観を基にしており、戦後の歴史学・教育において重要な役割を果たしました。特に彼の著作『中世的世界の形成』は高く評価され、戦後の多くの歴史学者が影響を受けたとされています。この作品は本来戦前に完成させる予定でしたが、戦時中に原稿が焼失したため、戦後に改めて執筆されました。彼は自宅にこもり、雨戸を閉め切ったまま集中して執筆を続けたとされ、この逸話は学生たちの間でも語り継がれています。

彼は古代から中世にかけての歴史的展開や法則性の検討を行い、平将門の乱や荘園制度、領主制などのテーマに取り組みました。その成果は多くの論文に集約され、石母田正著作集として全16巻が岩波書店から刊行されています。

また、彼は日本共産党と関係を持ち、1950年代には国民的な歴史学運動を推進しました。この時期に彼が著した『歴史と民族の発見』は、この運動の中心的な位置を占めていました。彼はまた、古代・中世史においても多くの影響を与え続ける一方で、唯物史観に対する批判も受けることとなりました。

評価と遺産

現代においては、石母田の唯物史観に基づく分析が評価される一方、批判的な意見も存在します。しかし、彼の業績と学説は評価され続けており、例えば『戦後歴史学用語辞典』では彼の古代国家論が高く評価されています。また、彼の研究手法は後の研究者たちに影響を与え続けており、彼の学問的遺産は今なお多くの学者によって受け継がれています。

その著作や評価は、反対意見を持つ者からさえも認識されるほどのものであり、石母田正が日本の歴史学に残した足跡は極めて大きいものです。

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