石油エーテル

石油エーテル：その性質と用途

石油エーテルは、石油を蒸留して得られる低沸点留分の一種です。無色透明の液体で、様々な用途で溶剤として広く利用されています。名前の「エーテル」とは裏腹に、化学的にはエーテル類を含んでいません。高い揮発性と引火性を併せ持つため、取り扱いには注意が必要です。日本では消防法で危険物第四類第一石油類に分類され、厳格な管理が求められています。

性質

石油エーテルの組成は、国際標準化機構（ISO）と日本工業規格（JIS）でわずかに異なりますが、いずれも低沸点の炭化水素を主成分とする混合物です。

ISO 6353-3によると、20℃における密度は0.644～0.655g/ml、40～60℃の留分が90vol％以上と規定されています。一方、JIS K8593では、密度は0.620～0.660g/ml、30～60℃の留分が90vol％以上とされています。

主な成分はペンタンで、イソペンタンやヘキサンなどの他の低級脂肪族炭化水素が混ざっています。そのため、その化学的性質はこれらの炭化水素に類似しています。これらの炭化水素は、常温では液体ですが、沸点が低いため、容易に気化します。この高い揮発性が、石油エーテルの溶解力や洗浄力に貢献する一方、火災リスクを高める要因にもなっています。

用途

石油エーテルの用途は多岐に渡ります。研究室レベルでは、クロマトグラフィーにおける展開溶媒として用いられることがあります。ただし、日本ではより安全性の高いヘキサンが広く使用されています。ヘキサンは石油エーテルと同様、炭化水素の混合物ですが、毒性や引火性の点で石油エーテルよりも扱いやすいとされています。

工業的には、主に洗浄用途に用いられています。精密機器や電子部品などの洗浄に適しており、その高い溶解力と揮発性によって、洗浄後の残留物が少なく済みます。また、石油エーテルは、界面活性剤などの純度確認にも役立ちます。例えば、界面活性剤に含まれる油脂などの不純物の量を定量する際に、石油エーテルを用いて不純物を抽出し、その質量を測定する方法があります。具体的には、界面活性剤、石油エーテル、水を混合し、分液ロートで振り混ぜます。すると、界面活性剤は水層に、油脂などの不純物は石油エーテル層に溶解するため、分離した石油エーテル層から溶媒を除去することで、不純物の量を定量することができます。

安全性

石油エーテルは引火性が高いため、取り扱いには細心の注意が必要です。火気厳禁の環境で作業を行い、適切な換気を確保することが重要です。また、皮膚への接触も避けるべきで、万一接触した場合は、直ちに洗い流してください。長期的な暴露による健康への影響も懸念されますので、作業時は必ず保護具を着用し、安全な作業手順を遵守することが不可欠です。

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