石火矢町ふるさと村

石火矢町ふるさと村：歴史と文化が息づく城下町の景観

岡山県高梁市に位置する石火矢町ふるさと村は、岡山県が指定するふるさと村の一つです。約250メートル続く坂道沿いに、往時の面影を色濃く残す旧武家屋敷や土塀が立ち並び、訪れる人を歴史のロマンへと誘います。その景観は、江戸時代初期から続く城下町の面影を今に伝えています。

江戸時代の城下町からふるさと村へ

石火矢町は、備中松山藩初代藩主・池田長幸による城下町拡張に伴い、家臣の屋敷として整備されたのが始まりとされています。江戸時代には上ノ中丁と呼ばれ、中級武士たちが暮らす町として栄えました。明治7年（1874年）に石火矢町と改称され、昭和49年（1974年）には、良好な景観が残されているとして、9ヘクタールに及ぶ町並みが岡山県により石火矢町ふるさと村として指定されました。

その後、現存する旧武家屋敷を活用した資料館などが整備され、歴史と文化を伝える拠点として現在に至ります。約550メートルにわたる、美しく保存された町並みは、当時の生活様式や社会構造を垣間見ることができる貴重な空間です。

貴重な武家屋敷：旧折井家と旧埴原家

ふるさと村では、高梁市が買い収し、復元整備を行った二軒の旧武家屋敷を公開しています。大人400円の共通入館料で、それぞれの屋敷を見学することができます。

旧折井家は、幕末に160石取りであった折井家の屋敷です。江戸時代に建てられた母屋と長屋門が現存しており、母屋は天保年間に建てられたと推測されています。中庭の池や庭石、踏み石なども当時のまま残されており、当時の生活の様子をしのばせる貴重な空間です。母屋に隣接して資料館が設けられています。

旧埴原家は、150石取りであった埴原家の屋敷です。母屋は江戸時代中期から後期に建てられたとされ、寺院建築風の装飾や数寄屋風の要素が見られるなど、当地の武家屋敷としては非常に豪華なつくりが特徴です。高梁市の重要文化財にも指定されています。離れの一階部分は、幕末の備中松山藩で活躍した藩政改革者・山田方谷に関する資料を展示する資料室として活用されています。

映画「男はつらいよ」とのゆかり

石火矢町は、映画「男はつらいよ」シリーズのロケ地としても知られています。「寅次郎恋歌」と「口笛を吹く寅次郎」の二作品で、地区内の岡村家が主人公・車寅次郎の義弟である諏訪博の実家として登場しています。興味深いことに、岡村家の門は、元々は現在の場所にあったものではなく、市内元町の本陣佐福屋の門を移築したものです。

アクセスとその他情報

石火矢町ふるさと村へのアクセスは、JR西日本備中高梁駅から徒歩20分、岡山自動車道賀陽ICから車で20分です。駐車場も完備されています。歴史と文化に触れる旅、そして映画のロケ地巡りにも最適な場所です。静寂に包まれた歴史的景観を、ぜひ訪れてみてください。

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