石田寛 (地理学者)

石田寛は、1919年3月1日に岡山県に生まれ、2019年1月22日に亡くなった日本の地理学者です。広島大学の名誉教授であり、その研究と教育活動は多岐にわたりました。彼の学術的な業績と、教育者としての貢献は、日本の地理学の発展に大きく寄与しました。

生い立ちと学歴

石田寛は、岡山県熊山村（現在の赤磐市）で生まれ、旧制岡山県第二岡山中学校（現在の岡山県立岡山操山中学校・高等学校）を経て、広島高等師範学校地歴科に進学しました。1940年3月に卒業後、京都帝国大学文学部で地理学を専攻し、1942年9月に卒業しました。その後、大学院に進学しましたが、第二次世界大戦の影響で、1942年10月に中部第48部隊に入隊し、軍人としての生活を送ることになります。1944年8月には陸軍中央通信調査部に配属され、アメリカ軍の暗号解読に従事し、1945年1月には陸軍少尉に昇進しました。しかし、終戦に伴い、同年9月に召集解除となりました。

戦後の活動と研究

戦後、石田寛は教育者としての道を歩み始めます。岡山県玉野中学校や岡山県第一高等女学校で教鞭を執った後、1948年11月に岡山師範学校教授に就任しました。学制改革を経て、岡山大学教育学部講師、1952年12月からは助教授として教鞭を執りました。この時期には、ミシガン大学日本研究センター岡山分室で、アメリカ人研究者との交流を深め、国際的な視野を広げました。1962年には、「日本の牧畜および放牧地域の地理学的研究」で京都大学より文学博士号を授与されました。さらに、1962年から1964年にかけては、文化交流員としてニュージーランドに派遣され、オークランド大学でマオリ族の農牧業に関する研究を行い、1966年にPh.D.を取得しました。

広島大学での活動と晩年

1966年、石田寛は広島大学文学部助教授に就任し、1972年には教授に昇任しました。1982年に定年退職し、広島大学名誉教授となりました。その後、福山大学に移り、学長補佐などを歴任し、1996年に定年退職しましたが、その後も特任教授、客員教授として教鞭を執り続けました。90歳を超えてもなお教壇に立ち、後進の指導に尽力しました。叙従四位。

著作活動

石田寛は、研究活動のかたわら、数多くの著作を執筆しました。2007年には、津田弘道の伝記『津田弘道の生涯』を出版し、岡山出版文化賞を受賞しました。また、自伝的なエッセイとして、2009年に『地理学のすすめ 卆の地理人生エッセイ』、2012年には『白寿を意識するに非ざれど』を出版しました。これらの著作を通じて、石田寛の地理学に対する情熱と、その人生観を垣間見ることができます。

主な著書

単著
地域研究のすすめ：続・牛歩遅遅（1982年、古今書院）
外国人による日本地域研究の軌跡（1985年、古今書院）
地域研究のための英和用語辞典（1999年、古今書院）
津田弘道の生涯：維新期・岡山藩の開明志士（2007年、吉備人出版）
地理学のすすめ 卆の地理人生エッセイ（2009年、古今書院）
白寿を意識するに非ざれど（2012年、吉備人出版）
編著
熊山槗と熊山驛（1988年、熊山町）
訳書
（浅黄谷剛寛との共訳）カンバーランド著、南西太平洋：オーストラリア、ニュージーランドおよび太平洋近隣島嶼の地理（1972年、朝倉書店）
（中山晴美との共訳）B.S.パラク著、インド：その国土と人々（1978年、帝国書院）

石田寛の生涯は、地理学者としての探究心と、教育者としての情熱に満ち溢れていました。その研究は、日本の地理学の発展に貢献しただけでなく、多くの人々に影響を与えました。

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