石田忠

石田 忠（いしだ ただし）について

石田忠は、1916年2月3日に生まれ、2011年1月25日に亡くなった日本の社会学者であり、一橋大学の名誉教授です。彼の専門分野は社会調査であり、特に原子爆弾被爆者の調査において重要な役割を果たしました。石田は、長崎被爆者調査を組織し、日本原水爆被害者団体協議会の専門委員を務めるなど、被爆者の実情と苦悩を広く社会に知らせる努力を続けました。

人物・経歴の概要

石田の故郷は、島根県邑智郡吾郷村（現在の美郷町）で、彼は旧制東京商科大学（のちの一橋大学）で学び、山中篤太郎の指導を受けて教育を受けました。彼は1965年に厚生省が実施した第1回の原子爆弾被爆者実態調査に参加しましたが、その後、厚生省の調査方法に対して批判の声を上げました。これを機に、石田は一橋大学内に社会調査室を設立し、伊東壮や濱谷正晴と共に長崎県での被爆者に対する調査に取り組むようになります。

彼は、被爆者が生き残ったことに対して感じる罪意識を明らかにするなど、被爆者の生活や心の内面に迫った詳細な調査を行いました。このような研究成果は、原爆被爆者の理解と支援に大いに貢献しました。さらに、石田は日本原水爆被害者団体協議会の専門委員を歴任し、被団協調査の企画や分析を担い、原爆被害者に対する支援の在り方を提言しました。

原爆体験調査の取り組み

2007年には一橋大学の大学院社会学研究科の平和と和解の研究センターと連携し、「原爆と人間」構築プロジェクトに取り組みました。このプロジェクトは、原爆体験に関する調査資料を集め、データベース及びアーカイブを整備することを目的としていました。2008年にはこのセンターの平和と和解に関する研究情報アーカイブプロジェクトが、世界情報遺産保護プロジェクト賞を受賞しました。

教育と影響

石田についても、その教え子たちが次世代の社会学研究に引き継いでいます。特に門下の濱谷正晴は一橋大学名誉教授として教鞭を執り、石田ゼミの理念を受け継いでいます。また、石田ゼミ出身者には、著名なコピーライターである廣澤昌がいるなど、彼の教育が広い分野に影響を与えていることが伺えます。

著作一覧

石田忠は多くの著書を残しています。その中には、以下のような作品があります：

• - 『反原爆 : 長崎被爆者の生活史』（編）未来社 1973
• - 『反原爆 : 長崎被爆者の生活史 続』（編）未来社 1974
• - 『原爆体験の思想化 : 反原爆論集 1』未来社 1986
• - 『原爆被害者援護法 : 反原爆論集 Ⅱ』未来社 1986
• - 『被爆者の死と生』（中谷敏太郎と共著）日本被団協原爆被爆者中央相談所 1988
• - 『論文集』沓石会（石田ゼミ） 2004
• - 『統計集<原爆体験の思想化>について : 2004.5.23社会調査室における講義録』沓石会（石田ゼミ） 2004

これらの著作は、原爆被害の実状や社会調査の重要性を理解する上で貴重な資料です。石田忠は、その生涯を通じて、社会学の進展と原爆被害者の理解に多大な影響を与えました。

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